第46回:金宝堂が専門葬儀社の売上高5位に浮上マスコミ初登場! 仲村和明社長が語る急成長の秘密
仏壇・仏具、お墓、葬儀などの事業を展開する株式会社金宝堂グループ(千葉県野田市)は、2011年度から2021年度までの、ここ10年間で売上高が31倍と急成長しています。
2021年度(8月決算)の売上高は、92億円に達する見込みで、同グループを専門葬儀社としてカウントすると、売上高ランキングは5位となります。
これだけの急成長は、供養(葬儀、仏壇、お墓など)事業会社ではあまり例がありません。
そこで、当年とって36歳でマスコミ初登場の仲村和明(なかむら かずあき)社長に、金宝堂グループの急成長の要因についてお聞きしました。
葬儀件数はここ3年間、前年比倍々で増加
はじめに金宝堂さんの経営理念をお聞かせください。
弊社は現在、グループとして8社ありますが、グループ全体の経営理念は、「全ての人に感謝をされる仕事をしよう」です。
弊社は、父が1971年に仲村仏具店として創業し、1981年に法人化して金宝堂に名称変更しました。創業から今年でちょうど50年目になります。
企業の存続年数割合には、いろいろな統計がありますが、中小企業を含めた存続年数割合は「創業から10年後には1割位」と言われております。
そういうことからしますと、企業が長く存続するということには社会的価値があると思いますので、以前は「100年続く会社を創ろう」ということを経営理念に掲げていました。
ただ、弊社もグループ会社が増え、従業員や取引先も増えてきましたので、皆に分かりやすいシンプルな経営理念が良いだろうということで、「全ての人に感謝される仕事をしよう」にしました。
事業内容と業績を教えてください。
事業としては、「仏壇・仏具」、「お墓」、「葬儀」のほか、「広告代理店事業」なども行なっております。
今期(2021年度、8月決算)の実績は、グループ全体で売上高は約92億円、営業利益は約9億円の見込みです。
前期と比べると、売上高は約28%増、営業利益は約29%増となります。
今期の事業別売上高は、仏壇・仏具とお墓で約60億円、葬儀は約30億円、その他が約2億円です。
売上高推移表(表1)を拝見させていただきますと、2011年度から2021年度までのここ10年間では、約31倍になっていらっしゃいますね。
また、2021年度の売上高92億円というのは、金宝堂グループを専門葬儀社としてカウントしますと、専門葬儀社の売上高ランキングでは5位ということになります。
まさに急成長されていらっしゃいますが、金宝堂設立時から、どのような成長カーブを描いてこられたのでしょうか。
設立当初は、創価学会の会員様向けの仏壇・仏具と葬儀を行わせていただいていました。売上高は、両方合わせて年間1億円位でした。
私は、個人事業主としてインターネットでアパレル関係の商売をしていたのですが、父から金宝堂でやって欲しいと言われて、2007年に入社しました。
私が入社してから仏壇・仏具のインターネット販売を始め、ネット販売だけで月1千万円くらい売れるようになりました。
そこで、創価学会の会員様向けだけではなく、一般の方向けにも仏壇・仏具のインターネット販売を2008年度から始め、2011年度には年間3億円位の売上になりました。
2012年度からは仏壇店舗を年間5~7店舗のペースで8年間出店し、仏壇・仏具の売上は、2020年度には約43億3千万円になりました。
仏壇・仏具店は、売上が大幅にダウンしたり、廃業したところも少なくないですが、すごいですね。
お墓の販売は、いつ頃から始められたのでしょうか。
2016年度からです。2017年度には葬儀の売上高を抜き、2020年度には約8億5千万円になりました。
2017年度、2018年度は葬儀より墓石の売上高の方が多いですが、2019年度からは葬儀の売上高の方が多くなっていますね。
はい。葬儀も2016年度から力を入れ始めました。
葬儀件数(表2)は、2015年度は年100件程度であったものが、2017年度は317件、2019年度は957件、そして2021年度は3,200件の見込みです。
葬儀件数は、ここ3年間は、毎年、前年比倍々で増えており、これまたすごいですね。
金宝堂さんが急成長したのは、2011年度~2020年度までは仏壇・仏具、2016年度から2020年度までは仏壇・仏具に加えて葬儀、2021年度は葬儀が主な要因ということになりますね。
今後3年間で130ホール体制にする
今後の重点方針と目標についてお聞かせ下さい。
今後につきましても、葬儀を一番伸ばしていきたいと思っております。
葬儀を伸ばしていくためには、出店をしなければなりません。
もちろんインターネットで伸ばしていくという方法もありますが、それは首都圏での話です。
弊社グループは、千葉県東葛エリア、高松市、仙台市などの地方をエリアとしていますので、葬祭ホールがないと葬儀施行件数は安定しません。なので、ホールを増やしていきます。
葬祭ホールは、土地を見つけてからオープンするまで10カ月位かかります。
思っていたより長くかかり、ここ3年間位は苦労したのですが、ポイントがつかめましたので、グループ各社の出店ペースがスムーズになってきています。
それにより、現在、24ホール目までのオープンが決まっており、2022年4月までには42ホール目までのオープンが確定しています。
42ホールをうまく活かせれば、2022年度の施行件数は5,500件を超えるだろうと見込んでいます。
2022年度は、何ホールの出店を予定されているのですか。
最低30ホールです。2022年度から3年間位は、年間最低でも30ホールは出していきたいと思っております。
それは、どのような考え方からでしょうか。
今、家族葬ホールの展開は、互助会さんを含めて加速してきています。家族葬ホールもエリアによっては供給過多で、出店出来なくなってきています。
なので、今後3年間位がビジネスチャンスと捉えて、3年間は30ホール以上を出したいということです。
年間30店舗以上を3年間出店するというのは、簡単ではないですよね。
それを金宝堂だけで出店すると、スタッフの採用が追いつきませんが、M&A(買収)させて頂いた会社が、仙台、高松、西東京と3社あります。また、仏壇店と弊社の合弁会社が北陸、静岡、茨城、広島と4社あります(表3)。
金宝堂とこれら7社を合わせた8社が年間4ホールずつ出せば、32ホールになります。そういう形で出店すれば30ホール以上出すこともさほど難しくはありません。
もちろん、金宝堂は多く出店するなど、グループ内でのバランスを取りながら30ホール以上を出していきます。
先ほど言いましたように、2022年4月までに42ホールの出店が決まっていますので、2024年度までに合わせて130ホール位にしたいと思っています。
この目標は、クリアできるだろうと考えています。
「8社が年間4ホールずつ出せば32ホールになる」
ここ数年は葬儀に力を入れてきたことが急成長してきた主な要因の1つであり、今後も葬儀が大きく伸びるだろうということですので、葬儀についての急成長の要因をお聞きします。
葬儀を伸ばしていくには、特に地方では葬祭ホールを出店していかなければならないということですが、多くのホールをスピーディーに出店するポイントについてお聞かせください。
葬儀社の多くの社長は、10年で1ホール出せば良いと考えているイメージがあります。
葬儀事業は比較的利益を出しやすいですから、3億円売れば3,000万円以上の利益が出ますから、それで十分という感じになってしまっている人が多いと思うのです。
確かに、年商3億円以下の葬儀社が圧倒的に多いですね。
私は、事業は伸ばさないと意味がないと思っています。伸ばさないと従業員の雇用条件も良くならないです。
事業を伸ばそうと思えば、ホールは出せると思うのです。
多くのホールを出店できるかどうかは、まず、考え方によるということですね。
多くのホールを出しやすいということでは、先ほど、「8社が年間4ホールずつ出せば、32ホールになります」とおっしゃっていました。それをお聞きして、社長のところではM&Aや合弁会社を作っていることで多くのホールを出しやすくなっており、そこが他の葬儀社との大きな違いと思いました。M&Aはどのような考え方で行なっているのでしょうか。
もちろんどこの会社でも良いわけではなく、買収するだけの価値があるところを買わせてもらっています。
例えば、仙台市の仙和さんは、仏壇しか行なっていなかった会社ですが、30年位商売を続けられており、仙和さんを知らない仙台市民はいません。ですから、価値が高いのです。
仏壇店を11店舗持たれていて、私が買わせていただいてから4店舗に減らしましたが、その後は葬祭ホールを展開し始めました。地域に名前が通っている会社なので、立ち上げはスムーズにいきました。
香川県のカナクラさんは、一度、倒産していますが、100年位続いている会社で、従業員はピーク時には600人位いたところです。
ですから、こちらも名前が通っており、葬祭ホール展開を始めても、比較的スムーズにいっています。
合弁会社4社というのは、どういうところですか。
弊社は、仏壇事業ではフランチャイズ展開も行なってきており、そうした付き合いのあるメンバーです。
仏壇は得意だけれども、葬儀は良く分からないので一緒にやりましょうということで、出資金を50%ずつ出し合って合弁会社を作り、葬祭ホールを展開しています。
仏壇事業でのお付合いが葬祭ホール展開につながっているわけですね。
多くのホールを出しやすい要因として、他にはいかがですか。
3億円、5億円をかけるホールだと確かに年に1ホールしか出せませんが、例えば1億円のホールだと年に3つや5つオープンできるわけです。
弊社のホールは、土地、建物を合わせて1億2千~1億3千万円です。
リフォームだと建物が3,500万円です。ある程度きれいに改装する場合でも建物だけで5,000万円を上限にしています。5,000万円であれば、3~5年で利益が出せます。
土地を買った場合でも、1億2~3千万円というのは、比較的安いですね。
もちろん、首都圏ではその価格では難しいですが、弊社グループが展開している地域では、それくらいで土地を手に入れ、ホールを建てられます。
土地は買い取りが基本ですか。
買った方が良いのか、借りた方が良いのかを判断して決めています。
千葉県東葛エリア、香川、静岡などは土地が安いので買った方が良いですが、仙台の中心部や石川県、広島などは借りた方が良いですね。
物件の確保については、今、どのような状況ですか。
「今回のコロナで、時代が5年間早まった」とある方がおっしゃっていましたが、小売り事業の成り立ちが変わってきていますので、コロナになる少し前位から、物件は出やすくなってきています。
インターネットで物を買う人が増える一方、小売り店舗は結構閉店してきています。コンビニも減っていますし、昔みたいに増やさなくなっています。
そうしたことから、家族葬ホールの物件は、比較的出やすくなり、入手しやすくなってきています。
でも、首都圏は、まだ難しいですよね。
それはそうです。
そうした意味では、金宝堂グループは、地方が多いので、多くのホールをスピーディーに出しやすいわけですね。
広告費は売上高の10%を投入
葬儀件数を増やしていくには、集客・受注策も重要です。これについては、どのようなことをされていらっしゃいますか。
集客に関しましては、広告費を売上の10%を目安に使っています。
葬儀社の広告費の平均は3~5%で、その数字と比較すると2~3倍ですが、弊社のグループは、各地でドミナント展開していますから、地元の同業他社のチラシに比べると、体感的には4~5倍多い印象をお客様に与えられていると思います。
インターネットに関しましても、SEOや広告などに、競合他社より3~4倍の費用をかけています。
ですから、広告費に関しましては、野立て看板なども含め、同業他社よりかなり多めに使っています。
それだけの広告費を投入すると、シェアも上げやすいでしょうね。
はい。その地域のシェアが30%を超えたら、そのエリアの広告費は減らして、次の新しいエリアに広告費を投下していくという形で展開しています。
広告宣伝関係の運営は、どうされているのですか。
金宝堂本部にマーケティングの専門スタッフとして3~4名配置しています。
専門スタッフがマーケティング理論に基づき、費用対効果を見ながら広告宣伝全体を回していますので、比較的高いレベルの広告宣伝が出来ていると思います。
葬儀単価は年々アップし94万円に
葬儀件数を増やしていくには、顧客満足度を上げつつ効率よい運営をしていく体制づくりも重要だと思います。これらの面では、どのようなことをされていますか。
搬送や霊柩を別会社にしたり、受注、施行、アフターをそれぞれ別の担当者が行う分業制にしたり、コンタクトセンターを設けたりしています。
これらによって、顧客満足度を下げずに、あるいは上げつつ葬儀件数が増えていることは確かです。
ただ、これらのことは規模が大きな葬儀社ならどこでも行なっていることですし、率直に言いまして、他社に比べて当社が自慢できることは特に無いと思います。
表2の葬儀件数と売上高の推移を見ますと、葬儀単価は、年々上がってきており、2021年度は約94万円の見込みですね。葬儀単価が上がってきている主な要因は、何でしょうか。
先程言いましたように、弊社では分業制を導入しています。
分業制は今や葬儀業界では珍しくないですが、葬儀単価が目に見えて上がるようになったのは「受注専任制」を導入してからです。
葬儀を検討されているお客様にとことん寄り添うことでしか信頼関係を築くことはできません。そのために、葬儀受注専任としてのスタッフを育成し、打合せのお時間をしっかりと設ける様にしています。
そうする中で、お客様が何を望むのかをしっかりと引き出し、本当に必要とする葬儀の形を一緒に考えていくことによって、単価アップにつながっているのだと思います。
何も特別なことをしているわけではなく、悲しみにくれる方の葬儀施行経験のある担当者であれば、そう難しいことではないと考えています。
IPO(新規上場株式)を目指す
今後につきまして、先ほどお聞きした事業戦略以外で考えていらっしゃることをお聞かせください。
IPO(新規上場株式)することを考えています。
上場することによって、いわゆる人、物、金などを集めやすくなりますし、次世代への事業承継なども行いやすくなります。
会社は私個人のものではないですし、優秀な人に継がせたいと考えています。
従業員の皆にとっても、企業の成長が目に見えたり、働くポジションも増えるなど、プラスになると思いますので、IPOをしたいと思っています。
IPOを目指す経営者はたくさんいますが、実際にIPOができるのは1割位ですよね。
そうですが、企業として今後成長をしていければ上場する事も不可能ではないと考えおります。
ですが、絶対ではありませんので、もう少し確度が高まってから従業員に話し、IPOの準備に入りたいと考えております。
金宝堂グループの急成長の要因がいろいろ分かりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
【仲村和明(なかむら かずあき)氏のプロフィール】
株式会社金宝堂 代表取締役社長。
1984年生まれ。千葉県にて昭和46年に創業された老舗仏壇店の三代目。
22歳という若さで代表取締役に就任し、インターネット通販がまだ世の中の主流ではなかった時代に仏壇・仏具の通販サイトをオープンし、他社にはない手法で販売実績を伸ばした。
近年は、二代目社長が展開し始めた葬祭事業に特に力を注いでおり、2016年に家族葬ホールを新規オープンした事を皮切りに年間6ホールのペースで新規オープンを続けている。
今後も葬儀・仏壇・墓石・相続のトータルプランナーとして、お客様の暮らしや想いに寄り添う新しいサービスの全国展開を目指す。
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塚本 優(つかもと まさる)
終活・葬送ジャーナリスト。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、葬祭(葬儀、お墓、寺院など)を事業領域とした鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務めたほか、終活資格認定団体を立ち上げる。2013年、フリーの終活・葬送ジャーナリストとして独立。 生前の「介護・医療分野」と死後の「葬儀・供養分野」を中心に取材・執筆活動を行なっている。