第50回:小学高学年から使える“死生観対話カード"登場
大切にしたいことを最期まで大切にできる社会にしたい

[2021/12/1 00:00]


終活とは、相続や遺言、葬儀、墓等の手続きに関する準備と思われがちですが、死生観を養うことも終活の1つです。

終活の目的は、「悔いなく安心して最期を迎えること」だとすると、死生観を養うことが最も重要な終活と言えるかもしれません。

その死生観について対話するカード等の新たなツールが、ここにきて増えています。

グリーフケアやデスカフェ等の死生観の対話の場に希望して参加したとしても、死生観は人間の根源的なものであるがゆえに、自分の気持ちや考えをいきなり開示するには勇気がいり、難しさが伴います。

そのため、死に関わる現場で、手軽に対話しやすくする必要性を感じて様々なツールを開発する専門家等が増えてきていることが背景にあります。

死生観について対話するカードの中でも、私が注目している1つは、今年5月に発売された「414(よいし)カード」です。

注目しているのは、従来のカードと比べると、「47枚の価値観カードは、日本人の死生観をベースにしている」「死ではなく、生にフォーカスしている」「小学高学年から使える」「カードプレイヤーが選んだカードに対し、質問がある」等の特徴があるからです。

そこで、「414カード」の開発者である緩和ケア医でNPO法人 幸(さち)ハウスの川村真妃(かわむら まき)代表理事にお話を聞きました。

川村真妃(かわむら まき)氏

祖父の死を機に、最期まで自分らしく生きたいと思った

「414カード」とは、どのようなカードでしょうか。

概略をお話ししますと、人生の最後の時まで、幸せで自分らしくあるために、「大切にしたい項目が書かれたカード」が47枚あります。

遊び方の基本ルールは、

(1)47枚のカードから、自分が大切にしたい項目のカードを1枚選ぶ

(2)選んだカードの裏に書かれた質問について考える

――です。

人数は、1人でも複数人でも楽しめます。

2人以上の場合は、「基本ルール+対話会形式」で行ない、進め方は、

(1)自分が大切にしたい項目のカードを1枚選ぶ

(2)なぜそのカードが大切か、その項目を選んだ理由を語る

(3)カードの裏の質問に答える

(4)今の気持ちを語る

――となります。

この遊び方から分かるように、「414カード」は、誰もが気軽に死を見据えて、自分が大切にしたいものに気づけたり、大切な人との対話を可能にするカードです。

特に「誰もが気軽に」ということを重視しており、小学高学年から大人まで、親子三世代で楽しむことができます。

「414(よいし)カード」

「414カード」の特徴につきましては、のちほどもう少し詳しくお聞きしますが、そのようなカードをなぜ開発しようと思ったのでしょうか。

死は、誰もが体験することですが、生きている人は誰も体験したことがありません。

だからこそ、死は、年齢や専門性の枠をこえ、「正しい」「間違い」で判断するしがらみから解放され、自分が大切にしたいことやあり方を自由に語り合うことができるテーマです。

死は、苦しみや悲しみをもたらすものですが、それと同時に、死ぬ瞬間まで生きぬく力を与えてくれる存在でもあります。

それゆえに、病気になる、ならないにかかわらず、身近な人、大切なペットが亡くなったタイミングや、ニュースやドラマで死について考える機会が訪れた時などに、死を見据えてみる。

そして、自分はどのようなことを最期まで大切に生きたいのかを考え、それについての対話を、自分や自分の大切な人と重ねていくことで、自分たちが大切にしたいことを最期まで大切に生きられる社会になって欲しいと思って開発しました。

「自分たちが大切にしたいことを最期まで大切に生きられる社会になって欲しい」と思われたのは、どうしてでしょうか。

私がそのことにこだわるのは、私自身の個人的な体験が影響していると感じます。

私は、6歳の時に祖父を肺ガンで亡くしました。

最期の時が近いということで、両親につれられ、大学病院に入院している祖父に会いに行きました。

そこで見た祖父は、さまざまな機械に繋がれていて、喋ることも、食べることも、呼吸することすら機械の補助を受けないとできない状態でした。

ベッドのそばに近づくと、目だけは動いていて私を見てくれた気がするのですが、その目も、悲しみと苦しみに溢れている気がして、私が知っている祖父らしさが失われていました。

最期の時に、自分らしさを失っている祖父の姿を見て私は愕然としました。

その体験により、私自身が、最期まで自分らしく生きたいという気持ちと、私が大切にしている家族や友人たちに、最期までその人らしく生きてほしいという気持ちを持つようになりました。

そして、最期まで自分らしく生きる=逝きるための知識と、技術を身につけたくて、医学部に入学しました。

しかし、医学部に入っても、医師になっても、医学は人を生かすためにあるもので、どう逝(い)かすかということについて、若い頃は考えない方が良いというアドバイスを先輩方から頻繁に受けました。

そのため、医師として、死について考えたり、語ることは、好ましくないあり方なのかもしれないと感じるようになりました。

そして、次第に死について考えたり語ったりすることを控えるようになりました。

「幸ハウス富士」は、病院とも、家とも違う第3の居場所

医学に失望されたわけですね。

いや、医学に失望したのではなく、自分らしく逝かすということを学ぶために医学部が最適の道だと思い、それを選んでしまった自分に失望しました。

しかし、声に出して語らなくても、あからさまに死についての探究をせずとも、自分の中では、最期まで自分らしくいることへの探究は続いていました。

そんな探求を続ける中で、最期まで自分らしく生きるためには、病気になっても自分らしさを失わないこと、つまり、「病気になっても病人にならない」ことが大切であると思うようになりました。

そのためには病気になっても、治療をしながら、自分はどんなことを大切にしながら生きたいのかを考える必要があると思い、そんな生き方を支援、促進することを目的に、2018年にNPO法人 幸ハウスを設立しました。

そして、ガン患者さんやご家族が、病気になっても病人にならないためのあり方を探究・実践するための居場所として、2018年3月に静岡県富士市に「幸ハウス富士」を開設しました。

静岡県富士市の川村病院の隣にある「幸ハウス富士」の外観

「幸ハウス富士」とは、どのような居場所なのですか。

幸ハウス富士には、ガンという診断を受けられた方、手術の順番を待っておられる方、化学療法中の方、治療が終わり社会復帰に向けて準備されている方や治療ではなくガンの症状緩和に取り組みながら、自分らしさを大切に時間を過ごされている方、また、大切なご家族の闘病に寄り添っておられる方など、ガンという病気にかかわる様々な方々が来られています。

利用者さんの中には、1回来られたことで、悩みが解決して、もう来られなくなる方から、一年に数回来られる方、定期的に来られる方など様々です。

こうしなくてはいけないという義務感から利用者さんを開放することも、ご自身を大切にするためには重要なことなので、ご自身にとって一番心地が良い形で幸ハウス富士と関われる形を模索していただき、ご利用いただけるようにしています。

「幸ハウス富士」は、利用者が大切にしているものを大切にする場所ということですね。

そうです。時間に縛られずに、利用者さんお一人お一人が大切にしたい思いに、ゆっくりと向き合える場です。

利用者さんが、自分が大切にしていることについて考え、それを口に出して語り合い、そして、それをお互い尊重し合い、支え合っているということが、幸ハウス富士という場所が、病院とも、家とも違う、利用者さんにとっての第三の居場所になっている大きな要因だと感じています。

「幸ハウス富士」の内部。お茶会やヨガ、アロマセラピー、臨床宗教師による語らいの場などを開催している

「死」を意識すると、自分が大切にしたい生き方に変わる

そのような居場所から「414カード」が生まれたわけですね。

はい。そのような場を開催しつづける中で、私たちは、病院ではあまり耳にしなかった言葉をよく耳にするようになりました。

それは「ガンになって良かったとは思わない。でも、ガンになったおかげで、自分がしたいことをより大切にできるようになった」とか、「ガンになったおかげで家族との関係性が良くなった」など、「ガンになったおかげ」というお言葉です。

ガンという診断をうけると、頭の片隅に死という言葉が見え隠れします。

そして、今まで生きる中で特に意識してこなかった「死」という存在が、実は、自分の命のすぐそばにあるということに気づくことで、利用者さんは、自分が人生の中で、本当に大切にしたいことに気づいたり、それを実際に大切にする生き方へとシフトされるようになるのです。

今までは仕事のため、家族のために我慢していたこと、でも実は大切にしたかったことを、ガンになり「死」を意識するようになったことにより、それを大切にするような生き方へと変化するのだと思います。

ですから、「ガンになったおかげ」という言葉が出てくるのです。

私の周りにもそういう人がいますので、分かります。

しかし、このような利用者さんの言葉には続きがあります。「ガンにならないでそういう生き方ができたら、もっと良かったのに」と付け加えられるのです。

幸ハウス富士で、利用者さんのこのような言葉を頻回に耳にするようになったことで、私たちは、自分らしいあり方を最期まで貫くには、死を見据えて、今大切にしていることや、行ないたいことについて、考えたり、語ることの必要性を痛感するようになりました。

そして、病気になる前から、死を見据えて、今大切にしていることについて考える場や機会を、日常生活の中で設けられるツールを作りたいと思い、414カードを作成いたしました。

414カードを作成するまでの経緯は分かりましたが、必要性を痛感しても、実際に作成しようとする人は少ないと思います。作成したのは、内発的な動機のようなものもあったのでしょうか。

幸ハウス富士の利用者さんの言葉に触発されて作成したカードではありますが、自分らしい最期については、私自身も、小さい頃から話したかったテーマです。

しかし、先程お話ししましたように、語りたかったけれども、語れなかったテーマであり、探究したかったけれども、公に探求できなかったテーマです。

幸ハウス富士の利用者さんの言葉を耳にした時、自分らしい最期というテーマについて、公に探究することを許された気がしました。

414カードを通して生まれている対話の場は、私が6歳の時からずっと生み出したかった場であり、それは、幸ハウスの利用者さんが、背中を押してくれた形で実現できた場だと感じています。

47の価値観は、日本人が最期まで大切にしたいことを重視

次に、414カードの特徴についてお聞かせください。

特徴の1つ目は、カードに記載した47の価値観は、日本人が最期まで大切にしたいということを重視したことです。

そのために、日本人の終末期ガン患者のQOLを評価する尺度であるGDI(goode death inventory)と、アメリカの精神科医のグラッサー博士が提唱された人間の行動を駆り立てる基本的欲求を参考に作りました。

GDIは、東北大学医学系研究科教授の宮下光令先生が、終末期ガン患者へのケアの質やQOL(quality of life)を評価するために、ご遺族に対して大規模調査を行なってつくったものです。

GDIには、日本人の終末期ガン患者の多くが共通して望む10の概念(コア 10 ドメイン)と、人によって大切さは異なるが重要である8の概念(オプショナル 8 ドメイン)に分けてあり、私たちは、GDIの18の概念(図表1参照)を参考に、カードにのせる価値観の大枠を決定しました。

図表1 GDIの18項目

GDIに、グラッサー博士の人間の行動を駆り立てる基本的欲求を加えられたわけですね。

そうです。GDIは414カードの大枠を決める上で大変参考になった調査研究結果でした。しかし、最期の時に大切にしたいことだけではなく、今から最期の時まで大切にしたこと、最期を見据えて、今どんなことを大切にするかということまで含めようとすると項目としては不十分でした。

そこで、選択理論の研究をされているウィリアムグラッサー博士の「生きるために誰もが持っている人間の行動を駆り立てる5つの基本的欲求」を参考にしてカードの項目を追加しました。

5つの基本的欲求とは、「生存の欲求」「愛・所属の欲求」「力の欲求」「自由の欲求」「楽しみの欲求」です。

GDIとグラッサー博士の5つの基本的欲求を参考にしたことで、最期に大切にしたいことと、最後を見据えて今大切にしたいことの両方の価値観をカバーできる47の価値観カードが出来上がったのです。

特徴の2つ目は、何でしょうか。

カードの表(おもて)の価値観を自分ごとにするため、また、対話を促すための質問を裏に載せたことです。

アイシュタインの逸話のひとつに、こんな話があります。

「もし、あなたが死にそうな状況になって、助かる方法を考えるのに1時間あるとしたら、どんな事をしますか」という質問に対し、アインシュタインは、「最初の55分は、適切な質問を探すのに費やすだろう」と答えたというのです。

この逸話を読んだとき、質問の力の偉大さ、すなわち質問こそが自分の未来を変えることにつながるということを知りました。

質問によって、自分が最期まで大切にしたいことや最期の時に大切にしたい価値観がより自分の中に落とし込まれて、それが未来の行動変容につながるというのです。

そこで、裏に質問を記載することにしました。

特徴の3つ目は、どういうことでしょうか。

№.1から20までのカードは、小学高学年の子どもでも理解できる内容にしているということです。

子供たちが、最後まで大切にしたいことについての対話の輪に参加できることで、おじいちゃん、おばあちゃん世代の人たちから、生きることの叡智を学び取ることができるし、死についての対話はタブーではないという新しい常識の中で育つことができます。

死を語ることへのタブーを乗り越えるためには、小さい頃からそのような話に触れていることが大切だと考えて、このような特徴を持たせました。

とても良いことですね。その他には、どのような特徴がありますか。

47枚の価値カードに、「自分の言葉で大切にしたいことを表現できるカード」と「心に留めておくカード」を加え、49枚のカードにしました。

「自分の言葉で大切にしたいことを表現できるカード」とは、47枚の価値カードの中に、自分が大切にしたい項目がない時に選んでもらうカードです。

このカードを加えたのは、47枚の価値カードを200人の知り合いに見てもらい、言葉や内容についてのフィードバックをもらった結果です。

フィードバックによって、住んでいる地域や育った環境は、最期まで大切にしたいことや最期の時に大切にしたい価値観と深く繋がっていることが分かったのです。

例えば、お水が美味しい地域に住んでいる人は「おいしいお水を飲めること」、富士山が日常生活でみられる地域に住んでいる人は「富士山が見えるところで過ごすこと」、感謝の気持ちを大切にしなさいと言われて育った人は「感謝の気持ちを最後まで持ち続ける」ことを大切にしたいと思うということです。

そこで、この47枚の価値カードにはない、自分が最期の時に、または、今から最後の時まで大切にしたいことが明確にある方が、その価値観をきちんと言葉にできるように、このカードを追加しました。

「心に留めておきたい」というのは、どういうカードですか。

自分の思いをうまく言葉にできなかったり、皆の前で話をする気持ちになれない時などに、選べるカードです。

人は、その時の状況で、普段なら話せるようなことも話せなくなることがあります。

そうした時に、無理して話をしなくてもいいという安心があると、自分は話さなくても話の輪に留まり続けることができます。

また、話はできないけれど人の話は聞いてみたいという人や、話したいことがうまく言葉にできない人が対話の輪の中にいるかもしれないことを想定して、このカードを作りました。

今まで対話会を開催した中で、このカードを選ばれた方が数人いました。

このカードは、人の心を安心させるために、また、話せなくてもその場にいても良いという暗黙の了解を与えるためにも、とても大切なカードだと感じています。

お話をお聞きしていると、開発に着手してからカードを制作するまでにかなりの時間を費やされたようですね。

はい。構想が生まれてから実際に発売に辿り着くまでに、2年以上の月日をかけました。

414カードは、ACPとALPをつなぐ架け橋

414カードに似たものに、人生会議という愛称のACP(アドバンス・ケア・プランニング)があります。また、主としてACPで使うことを目的としたカードも発売されており、広く使われています。それでも、414カードを制作したのはどうしてでしょうか。

医療技術の進歩に伴い、医療が多様化し、それにより、最期の時に、どんな医療を望むのか患者や家族が選択しなくてはいけない社会が構築されるようになったことで、事前指示書やACPという概念が医療機関や医療従事者を中心に日本の社会に広がりました。

そして、最期を見据えて、その時、どんな医療をうけたいのか、どんな最期をどこで迎えたいのかということを、患者や家族が事前に考えなくてはいけないという状況が生まれました。

しかし、病気を宣告され動揺している中で、患者や家族が恐れている死と向き合い、その時のことを想像することはとても難しいことです。

また、最期の時に望むことは、その人が置かれている状況やその人の状態によって変わっていくことが、事前指示書や人生会議を、医療従事者が主体になって進めていくことの足枷になってきました。

そうした難しさや足枷に対応する考え方や動きが出てきているのでしょうか。

はい。このような現状に対して、臨床倫理の問題に長年取り組み、啓発・研修活動を精力的に行なわれている東京慈恵会医科大学附属柏病院・総合診療部長の三浦靖彦教授は、「健康なときに自分自身の人生について考える過程が重要」と指摘されています。

そして、ACPの前段階ではALP(アドバンス・ライフ・プラン二ング)が必要と述べられています。

ACPが、病気を発症した後で「どこでどのように医療・ケアを受けたいか」や「もしもの時に受けたい医療と受けたくない医療は何か」を考えるものだとすると、ALPはもっと手前の健康な時から人生観や死生観を元に「自分は何を大切にしているのか」「どのような人生を歩みたいか」について考えるものだとおっしゃっています。

図表2は、三浦先生が作られたACPとALPの概念図です。

図表2 ACPとALPの概念図 出典:慢性期.com

私も、三浦先生のこのようなお考えに全く同感です。

だからこそ、最後が近くなるもっと前から、病気になるずっと前から、人生観や死生観を元に、「自分は何を大切にしているのか」「どのような人生を歩みたいか」について考えたり、対話ができるようにと414カードを制作しました。

三浦先生の概念図に照らすと、414カードはどのように位置づけられますか。

ALPとACPをつなぐ架け橋としての立ち位置です。

自分が、自分の人生の最期まで、今からどんなことを大切に生きたいのかということを考えることで、自ずとその延長線上にある人生の最終段階にどのような医療を受けたいかということについても見えてきます。

つまり、ALPの対話を深めておくことが、厚生労働省が進めたいACPの対話をスムースにするためには不可欠なことなのです。

414カードとACPは、全く別物ということですね。414カードとACPの違いを整理して教えていただけますか。

図表3がACPと414カードの違いです。

414カードとACPとでは、「どこで」「誰と」「どんな目的のためか」はすべて違います。

図表3 414カードとACPとの違い 作成:川村真妃

小学校でも414カードの対話会を開催

414カードが発売されてから、まだ半年程ですが、どのような使い方や使われ方をされていますか。

414カードは現在、死を見据えて今大切にしたいことについての対話を推進させるために、次のような形でご利用いただいています。

1)幸ハウス富士では、希望される利用者さんと随時対話会を行なっています。

2)ZOOMやクラブハウスなどのオンライン上で、死生観を語れる場をつくっています。

3)病院や老人ホームでは、定期的に対話の場が作られています。

4)大学を初め小学校でも414カードの紹介や対話会を開催しています。

5)お寺で法事の待ち時間に、414カードをご家族に紹介しています。

414カードゲームを行なっている様子

それらの中で、414カードを使って変化した人の例をいくつか教えていただけますか。

以下のような例があります。

(例1)70代男性 肝臓癌 ステージ4

  • 余命2週間と医師から告げられる。
  • 残りの時間、何を大切にしたら良いか考えたくて414カードに触れる。「自分の人生を振り返る」というカードで手が止まる。
  • 虚勢をはって競争社会の中で必死に生きてきたこと、それゆえに、人に一切感謝をしてこなかったことに気づく。残りの人生は感謝の気持ちを伝える日々にしようと思う。
  • 毎日、人に会ったり、電話をかけて感謝を伝え続けた。それにより「今まで感じたことがない穏やかな気持ちになっている」と話される。
  • 旅立たれる前日まで感謝を伝え続けられた。

(例2) 50代女性 大腸癌stage3 抗ガン剤治療中

  • 「抗ガン剤治療をきちんと行なえることが大切」と思っていた。
  • 414カードを通じて最期までどんなことを大切にしたいかという対話をした。
  • 「心残りがない」という価値観カードを選んだ。
  • 旅行が好きで、全国にいる友達に会いたいと思っている自分の気持ちに気づく。友達に会わずに旅行せずに死んだら心残りがあることに気づき、コロナが落ち着いたこともあり、治療の合間をぬって、小旅行にいくことを考え始める。
  • その一歩として、大阪にいる友達に会いに行くという旅行を計画中。それにより治療にも前向きに、目的を持って取り組めるようになった。

(例3)50代女性 大腸癌治療後

  • 死ぬことを考えると悲しくなるから考えたくない、と死に関する対話を避けていた。
  • 父を看取ったことで、人が死ぬことについて話してみたいと思う。
  • 自分がどんなことを最期まで大切にしたいかということだけでなく、旅立った父がどんなことを最後まで大切にしていたかということを、414カードを見ながら考えてみた。
  • 死と向き合い、その時まで大切にしたいことについて考えることで、「父親が大切にしていたことと自分が大切にしているものがつながっている」「自分の中に父はいる」ことを感じた。
  • 死を語ってみなかったら気づけないたくさんのことに気づいたことで、「死を語ることは怖いことではない」という考え方に変わった。

すごく変化される方もいらっしゃるのですね。

4月14日を「414(よいし)の日」に登録

最後に、今後、414カードをどのように広めていくのかお聞かせください。

小学校、中学校、高校、大学などでは、これからどんな人生を、どう歩んでいきたいかということを考える過程の中に、最期を見据えるという考えを含めてもらえるようにしていきたいです。

そのために、私たちはいずれ終わりを迎えるということ、死ぬ存在だということ、だからこそ、今を丁寧に、自分の思いや行ないたいことを大切に生きてほしいという思いを、414カードを通じて伝えていきます。

看護学校や医学部、お寺、葬儀会社など、仕事の中で死と向き合っている人たちに対しては、414カード対話会を開催し、人の死生観に向きあう日々を送るからこそ、自分の死生観にも向き合える時間を作ってあげたいです。

また、成人式、結婚式、還暦、大切な人の葬儀など人生の節目の時に、414カードを通して、お互いの死生観や自分の死生観について考える時間を持てるようにしたいです。

いろいろ考えておられるのですね。

そのほか、414カフェを開催し、生きる象徴である、食べるという喜びの行為をする中で、最期までどんなことを大切に生きたいのかという対話ができる取り組みも進めていきたいと考えています。

誰もが死を迎えるように、誰もが食べないと生きていけません。食べることを通じて生きているということと対話を通じて最期を見つめるという行為を同時に行なえるような単発カフェを、レストランなどを貸切りで行なう。

そして、いずれは、そのようなテーマカフェをオープンしたいです。家族や大切な人とおいしい食事を取るたびに、生きることや死ぬことについて対話できるようなテーマカフェを、地域の中に作りたいという夢を持っています。

また、一般社団法人日本記念日協会で4月14日を414(よいし)の日として登録し、毎年4月14日は、国民が大切な人と最期まで大切にしたいことについて語り合う日にできるような準備も進めています。

これらの取り組みを通じて、子供から大人まで、誰もが、最期まで自分が大切にしたいことについて考え、語り、支え合う社会にしていきたいと考えています。

そのような社会になると良いですね。今日は、とても貴重なお話をありがとうございました。



【川村真妃(かわむら まき)氏のプロフィール】

医療法人秀峰会川村病院 理事・医師、NPO法人 幸ハウス 代表理事、公益財団法人五井平和財団 常務理事。

2000年 東海大学医学部卒業。

三重大学医学部附属病院、鈴鹿中央病院および慈恵医科大学附属病院勤務を経て、2007年に公益財団法人 五井平和財団常務理事に就任。「世界平和は一人一人の心の中からはじまる。私たちは誰もが、より良い未来に向けた地球進化の担い手であり、その為の共通の使命と責任をもっている」という理念の元、命の尊厳、 多様性の尊重が守られる社会構築の為の活動を展開する。

2018年 医療法人秀峰会川村病院理事就任。NPO法人 幸ハウスを設立させ、その運営や緩和ケア病棟「いまここ」で医師として勤務しながら、誰もが病気になっても(ならなくても)最期まで自分が大切にするものを、大切にできる生き方、あり方をサポートする活動に尽力している。

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塚本 優(つかもと まさる)
終活・葬送ジャーナリスト。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、葬祭(葬儀、お墓、寺院など)を事業領域とした鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務めたほか、終活資格認定団体を立ち上げる。2013年、フリーの終活・葬送ジャーナリストとして独立。 生前の「介護・医療分野」と死後の「葬儀・供養分野」を中心に取材・執筆活動を行なっている。

[塚本優]
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