第49回:福岡市社協が推進する2つの「死後事務委任」事業
新規契約件数は2019年度に一気に倍増

[2021/11/1 00:00]


民間の社会福祉活動を推進することを主たる目的とした社会福祉協議会(以下、社協)では、「死後事務委任」(注1)事業を行なうところが徐々に増えてきています。

その中でも、先進的な取り組みを行なっている社協のひとつが福岡市社協です。

同社協では、葬儀・納骨等の実施費用を預託金として預かり、契約者が亡くなった後にサービスを提供する「ずーっとあんしん安らか事業」を2011年6月からスタート。

さらに、2017年4月には、預託金なしで月に数千円の支払いで利用できる「やすらかパック事業」を加えました。

両事業を合わせた新規契約件数は、2019年度に一気に倍増し、その後も順調に推移しています。

そこで、死後事務委任事業を担っている終活サポートセンター(注2)の小池 紀徹(こいけ のりゆき)所長と吉田 時成(よしだ ときなり)主任にお話を聞きました。

注1:死後事務委任とは、主に家族や身寄りがいない高齢者等が、自分の葬儀や納骨、その他の事務手続き等について第三者に委任し、実施してもらうこと。

注2:2019年4月に開設。終活相談窓口、出張相談窓口、出張出前講座、死後事務委任事 業等を行なっている。

小池 紀徹さん(左)と吉田 時成さん(右)

社協の独自事業として死後事務委任をスタート

まず、死後事務委任事業をスタートされた経緯からお聞かせください。

「ずーっとあんしん安らか事業」(以下、ずーっとあんしん)の前身の事業があります。2003年に「福岡市高齢者民間賃貸住宅入居支援事業」が開始され、この時から「死後事務」に関する事業を行なうことになりました。

これは、福岡市からの補助事業であり、どちらかというと高齢者の住み替えを支援するための事業として始まりました。

家主側にすると、高齢者に賃貸する場合、死後の家財処分とか、孤独死が困るという事情があるので、家主側がこの事業を活用して、高齢者の入居を促進することが狙いでした。

しかし、この事業を利用する方はさほど現れず、その一方で、アパート入居者、一戸建て居住者や施設入居者に関わりなく、「死後事務」に関するニーズが一定程度存在することが分かりました。

そこで、2011年に住まいの支援事業と死後事務委任事業の2つに分け、後者は社協の独自事業として「ずーっとあんしん」がスタートしました。

【図表1】2つの「死後事務委任事業」の比較表

対象者の判断が難しい場合は「審査会」で検討

「ずーっとあんしん」の内容についてお聞きします(図表1参照)。この事業のサービスを利用できる「対象者」ですが、まず、年齢を70歳以上としているのは、どのような考えからでしょうか。

高齢者というのは、一般的に65歳以上の人とされていますので、事業開始当初は65歳以上でした。

ところが、契約するときに、公正証書遺言を書いてもらうケースが多いのですが、65歳だと、決めるべきこともまだ決められないという相談者が結構いらっしゃったり、10年、15年経ってくると遺言の内容が変わってくるということもあります。

そこで、75歳だったら遺言の内容もそう変わらないのではないか、一度試してみようという意図もあって、75歳以上に引き上げました。

しかし、対象者要件に該当する人が少なくなって相談者・契約者が大幅に減った一方、70歳位の方で契約したいと強く希望する方もいらっしゃいましたので、70歳以上に引き下げました。

対象者の要件の1つに「契約能力」とありますが、具体的には、どのような能力が必要ということでしょうか。

契約能力とは、民法上の「意思能力」を指していますが、私どもが実務上気にしていることは2つです。

1つは、そもそも契約内容を理解できる能力があるのかということです。

もう1つは、遺言を書くことが多いので、遺言の内容に疑いがないかです。

例えば、Aという団体に遺贈すると書いたけれども、書いた本人が亡くなった後に、親族がいらっしゃって、「この遺言の内容がそもそも疑わしい、本当に本人が望んだことなのか」などと疑いをもたれる可能性もありますので、遺言を遺す能力があるかどうかを判断するようにしています。

「原則として子がいない」という対象者要件もありますが、「原則として」ということは、例外もあるということでしょうか。

そうです。例えば、子供がいても長年疎遠で連絡がとれないなどの場合には、例外として、「対象者」として認める場合もあります。

対象者要件をお聞きしていると、判断が難しいケースもあるのではないかと思いますが、そういう場合はどうされているのですか。

おっしゃる通り、判断が難しいケースもあります。

例えば、「原則として子がいない」という要件については、「相談者が若い頃に離婚して子供がいるけれども、連絡がとれない場合」は、どう判断するのか。

あるいは、「子供はいるけれども、障がいがあって死後事務はできない場合」は、どうなのかといったケース等です。

こうした判断が難しいケースについては、弁護士、法学部教授、緩和ケアや看取り等を行なっている高齢者施設の管理者の3人で構成される「運営審査会」に諮り、助言等をいただいています。

審査会には、契約の判断に困るケースだけでなく、契約者の状況が変わって、契約を継続していいのかどうかといった判断に迷うケースなども諮っています。

対象者要件として、収入や資産に制限を設けていないのはなぜでしょうか。質問の趣旨は、こういうことです。社協というのは介護保険サービス等の「制度事業」を行なっているところと、「地域福祉活動」を中心に行なっているところがあり、福岡市社協は後者だと聞いております。後者の財源は、主に行政からの「補助金」や「委託料」です。つまり、税金です。税金を使う場合には、公共福祉的な観点から、対象者を収入や資産の少ない人に限定するのが一般的だと思います。そういう視点からの質問です。

おっしゃる通り、当会は後者の性格が強いです。しかし、死後事務委任事業に関しましては、社協の独自事業としてスタートしました。

事業が一定の評価をされ、現在は、補助金が一部入ってきていますが、基本的には現在も独自財源によって行なっています。

例えば、葬儀・納骨費用等の預託金の1割を執行費用としていただいていますし、自主財源として、「遺贈」や「寄付」を受ける取り組みなども行なっています。

このような財源を活用することで、事業の継続性を担保するとともに、資産等に上限を設けず、死後事務で困っていらっしゃる方を柔軟に支援できるようにしています。

葬儀と納骨費用等の預託金は50万円以上となっていますが、「50万円程度となると、他の死後事務サービス事業者などの民業を圧迫することになるので好ましくない」との声も聞かれます。この点はどうお考えでしょうか。

民間の事業者と比べて、社協は公共性が高いのも事実です。ですので、当会で定めている対象者要件は他よりも厳しくなっており、提供するサービスも絞ることで、本当に死後事務を必要な方と契約しています。

要件に該当しない方などは、必要に応じて民間事業者を紹介しています。

預託金は社協が預かるので安心という契約者が多い

次に、「ずーっとあんしん」のサービス内容についてお聞きします(図表1参照)。預託金によるサービスは、「葬儀・納骨」「公共料金等の精算」「残存家財処分」ですね。

そうです。あらかじめ預託金をお預かりし、契約者は亡くなった場合にお預かりした金額内で、それらのことを行ないます。

預託金は、他の死後事務サービス事業者等が預かる場合と異なり、社協が預かるので安心という契約者は多いですか。

社協は社会福祉法に基づく非営利の民間団体であるため、公的な性格を有しています。そうしたことから、当会の事業をご利用いただいている方は多いと思います。

契約された人には、見守り活動をされていますね。定期的な電話連絡や訪問の頻度は、どれぐらいですか。

「電話連絡」は原則月2回ですが、人によっては月に1回で十分という人もいますので、ご本人の意向に沿った対応をしています。

月2回では不安という方には、福岡市が「声の訪問」という無料で毎日安否確認を行なうサービスを行なっており、そちらをご案内しています。

「訪問」は、原則3ヵ月に1回です。

電話連絡や訪問を行なうことで、「利用者の日常生活の把握に努めます」とありますが、訪問時には、どのようなことを行なうのでしょうか。

ご本人の体調の変化などに気づいた場合には、社協が支援している地域福祉活動(見守り活動、サロン活動、生活支援ボランティア等)や民生委員につなぎます。

必要に応じて、介護保険サービスの利用を促したり、認知症の兆候がみられないかを確認しています。

認知症への対応では、当会では、判断能力が不十分な方の福祉サービス利用の援助や日常金銭管理等を行なう「日常生活自立支援事業」を行なっています。

また、「法人後見事業」も行なっており、認知症がさらに進んで成年後見等に移行しなければならなくなった場合には、社協が成年後見人等に就任し、継続的に支援することができる仕組みを設けています。

契約者が死亡あるいは緊急時の場合の体制は、どうされていますか。

利用者さんは、いつ亡くなったり、緊急を要する事態になるか分りませんので、夜間や休日などの緊急時の連絡体制をとっています。

具体的には、外部のコールセンターに委託し、緊急時はそこが連絡を受け、そこから社協の職員が持っている緊急連絡専用の携帯に連絡が入るようにしています。

専用携帯は、社協の職員が持ち回りで持つようにしています。

契約された人には、オプション(有料)サービスとして「書類等の預かり」「入退院支援」も行なっているそうですね。内容、料金を教えてください。

「書類等の預かり」は、契約書等の大事なものを預かるサービスです。料金は、年間3,000円です。

「入退院支援」は、入退院時の付添いのほか、入院のために預金をおろすとか、自宅に衣類を取りにいくなど諸々の支援を行ないます。料金は、1回2,000円です。

預託金は60万円~80万円台が多い

利用料金についてお聞きします(図表1参照)。預託金は「50万円から」になっていますが、「から」というのは、どういう意味でしょうか。

ご本人が希望するご葬儀の内容や納骨先にかかる費用によっては、50万円では不足する場合があり、必要な金額を積み増して預託していただくということです。

つまり、本人の希望によって積み増しができるということですね。預託金の実際はどうなっていますか。

60~80万円台が多く、80万円台までで全体の約8割を占めています。

積み増ししている人が結構多いのですね。どういう積み増しをしている人が多いですか。

身寄りのない方が多いので、どちらかと言えば、葬儀は簡単で良いという人が多く、自分が信じているお寺さんにお経をあげてもらいたいとか、戒名を付けて欲しいとか、納骨先はこういうところが良いということで増額する人が多いです。

あとは、家財が多いために処分費用が増えるので増額になるという方もいます。

遺言を作成する人の方が多い

契約方法についてお聞きします(図表1参照)。利用者が死亡した場合に、遺留金品や預託金の残金等を引き渡す引渡人がいる場合は、その者の承諾を得て引渡人として指定するわけですね。

そうです。引渡人となりうる法定相続人がいる場合でも、引渡人となることを依頼できない事情がある方は、引渡人がいない場合と同様に、公正証書遺言の作成が必要になります。

その場合、遺言執行者を立て、家財処分等で出てきた財産は、遺言執行者に引き渡すことになります。

遺言執行者は、利用者が指定した人や団体(ユニセフ、国境なき医師団等)に相続や遺贈することになります。

遺言を作成している人と、していない人の割合は、どの位でしょうか。

契約者全体のうち8割程度の方が遺言を作成しています。

契約者全員の約8割が公正証書遺言を書いているわけですね。遺言執行者は、誰になることが多いですか。

公正証書遺言を書く方は、だいたい弁護士とか司法書士になどの専門家に相談しますので、作成を依頼した専門家が遺言執行者になるのがほとんどです。

引渡人を指定するか、遺言を作成する必要があるのは、どうしてでしょうか。

私どもとしては、利用者の残存財産の行先がなくならないようにとの意図で、必ず引渡人の指定または遺言を作成するようにしています。

【図表2】2つの「死後事務委任事業」のスキームの比較

少額保険を活用し月3,000円~7,500円で利用可能

次に、「やすらかパック事業」(以下、パック)についてお聞きします(図表1、図表2参照)。これは、どのような意図・背景からスタートされたのでしょうか。

「ずーっとあんしん」の相談を受けていく中で、50万円以上の預託金を捻出することが難しい方や、葬儀や納骨にこだわらないから簡単に利用したいというニーズが一定あるとが分かりました。それらのニーズにも応えようと設計したのが「パック」です。

保険を活用されていますね。

はい。死亡保険金で死後事務ができないかと考え設計しました。

少額短期保険だと、保険金の第三者(社協)受け取りが可能で、保険加入条件も比較的緩やかでしたので、それを活用することにしました。

保険金額は50万円で設定し、毎月の利用料は3,000円~7,500円で、申込時の年齢および健康状態により決まります。

預託金なしで、毎月数千円の料金で利用できるというのが「パック」の一番の特徴です。

そのほか、「パック」と「ずーっとあんしん」との主な違いについて教えてください。

「パック」の対象者の年齢は、40歳以上からとかなり若いです。

また、「パック」は、子などの親族がいても、親族が死後事務を行なうことができなければ契約対象としています。親族要件は、「パック」の方が、かなり緩いということです。

なぜ、緩くしているのでしょうか。

「パック」は、なるべく簡易な手続きを低料金で死後事務のニーズに対応できるようにしようということを、ひとつの目標にしています。

「ずーっとあんしん」は、原則として子供がいたら利用できないなどの要件もありますので、そういう面で2つの死後事務委任の特徴分けをしました。

ただ、親族の方には、行き違いなどがないよう、必ず事前に「パック」に契約してもよいかどうかの確認は行なっています。

その他に、主な違いはありますか。

「パック」は、引渡人指定は行なっていません。対象者を90歳未満の方までとしていますので、引渡人を指定してもらっても、本人が亡くなられた時に、引渡人も亡くなっていたというリスクがあるからです。

そこで契約希望者全員に遺言を書いてもらいます。昨年7月から法務局が自筆証書遺言書を預かるということを始めましたので、公正証書ではなく、自筆証書遺言の作成でも可能としました。

自筆証書遺言は簡単に作れるし、それを法務局が預かってくれることで、その後の手続きなどもスムーズに行なえることがメリットです。

保険を活用していますから、契約・サービスの仕組みも「ずーっとあんしん」とは異なりますね。

はい。利用者が社協に利用料を払い、社協が保険会社と保険契約を締結します。

また、社協が委託した業者が定期訪問および死後事務を行なうという仕組みです。

【図表3】「死後事務委任事業」の実績推移

死後事務実施以外の解約も比較的ある

では、2つの死後事務委任事業のここ数年度の実績を教えてください(図表3参照)。まず「ずーっとあんしん」からお願いします。

新規契約件数は、2017年度が1件、18年度も1件、19年度は3件、20年度は10件と推移しています。その結果、契約者数も2017年度の103件から、92件、81件、82件と減少しています。

新規契約件数は、2015年度までは10件以上あったものが、2017年度1件、18年度1件と激減したわけですね。その要因は何ですか。

先ほどお話ししました契約対象者の年齢を65歳から75歳に引き上げたのが2016年の後半で、このことが大きく影響していると思います。

そこで70歳に引き下げたのが2019年度の10月からで、そこからまた増え始め、2020年度は2ケタとなりました。

解約件数を見ますと、死後事務実施以外のものが年度により2件から7件と結構ありますね。これらは、どのような解約でしょうか。

ご自身の意思による解約より、「親族が死後事務を担えるようになった」、「親族以外の後見人がついた」、「福岡市外に転居した」などのケースがほとんどです。

続いて、2017年からスタートした「パック」の実績推移をお願いします(図表3参照)。

新規契約件数は、2017年度は12件、18年度9件、19年度18件、2020年度7件と推移しています。

2019年度は前年度に比べ倍増しているのは、契約要件を緩和したからだと思います。

先ほど言いました対象年齢を40歳に引き下げたのと、保険の審査要件も緩和しました。当初は健康リスクなどから割増料金のない方だけを対象にしていましたが、利用料金を割増しなければならない方も一定数いたので、2019年度から5割増の方まで契約対象を広げました。

2つの事業の利用者の違いはどうでしょうか。

「ずーっとあんしん」は、自分の希望通りの葬儀・納骨ができるということで選ぶ人が多いです。

「パック」は、葬儀は直葬ですし、納骨も基本的にはこちらの指定埋葬先になっていますので、葬儀・納骨にはこだわらないとか、周りの人に迷惑をかけたくないという考えの方が多くなっています。

また、資産が多くないので選ぶという方もいらっしゃいます。

相談件数が大幅増加し、新規契約件数も増えた

2つの事業を合わせた新規契約件数は、2017年度は13件、18年度10件、19年度21件、20年度17件と、19年度は前年度に比べ倍増し、20年度も順調に推移していますね(図表3参照)。この主な要因は、何でしょうか。

2019年4月に「終活サポートセンター」を開設し、センターで死後事務委任事業の周知を行なうようになったことにより、相談件数が大幅に増え、それに伴って新規契約件数も増えたというのが一番の要因だと思います。

確かに、2つに事業を合わせた相談件数は、2018年度は249件であったものが、2019年度は475件と倍近く増え、2020年度は561件とさらに増えていますね。終活サポートセンターにおける相談対応は、どのようになっているのでしょうか。

「一般相談」として、終活に関する相談受付や各種情報提供を電話や来所で行なっており、開設時間は平日の9時~17時です。

「予約制専門相談」として、専門的な相談員による面談を希望する方には、最大1時間の面談を行なっており、開設時間は毎週水曜日の13時~16時です。

このほか、ふれあいサロンや地域カフェ、住民福祉講座など、皆さんが集まる場所で、終活に関する「終活出前講座」や、相談コーナーを設けて個別相談に応じる「出張相談窓口」を設けたりしています。

「終活出前講座」の様子
公民館での出張相談会の様子

相談者数、相談件数はどのくらいあるのでしょうか。

2019年度は、相談者数はのべ852名、相談件数はのべ1,439件でした。2020年度は、相談者数はのべ796名、相談件数はのべ1,337件です。

2020年度はコロナ禍でしたが、さほど減っていませんね。

来所相談は減りましたが、電話相談は増えており、我々も終活相談に対するニーズは多いなと感じております。

終活サポートセンターを設けたことにより、終活に関する相談が増え、それに伴い死後事務委任の相談件数も増えたというのは、どういうことでしょうか。

終活の相談というと、相談したいことが決まっている人だけでなく、相談したいことが決まっていなくて、今後のことが不安だから相談したいというような方も多くいらっしゃいます。

後者の方には、どのような問題を抱えて不安なのかをひも解いて整理していくと、どうすれば良いかが分かり、「あなたは、死後事務の準備が必要ですね」というアドバイスをすることができます。

問題をひもといて整理する作業が一人だとなかなかできなかったものが、終活サポートセンターでの相談を通じて整理でき、そこから当会の死後事務委任事業を紹介でき、それが契約実績につながっています。

今後は特に「パック」事業の拡大に力を入れる

死後事務委任事業の課題点は何でしょうか。

「ずーっとあんしん」は、一定の預託金がないと利用できないというハードルがあります。

では、そういう人たちが「パック」を使えるのかというと、ある程度健康でないと保険の審査が通らないというハードルがあります。

その二つの契約要件に合致しない方々が一定数いて、そこをどうしていくのかが一番大きな課題です。

それに対して現在対応していることや、対応策はあるのでしょうか。

福岡でも死後事務委任事業を行なう民間団体がいくつか出てきています。その中には、当会が対応できていない生活保護等に対応しているところもありますので、そういうところをご紹介しています。

最後に、今後の方針についてお聞かせください。

福岡市はいま、人生100年時代の到来を見据え、誰もが心身ともに健康で自分らしく暮らしていける持続可能なまちを目指すプロジェクト『福岡100』を進めています。

その施策のひとつに、当会の終活の事業も位置付けられ、終活の普及啓発を行政と連携しながら取り組みを強化していこうと考えています。

特に、「パック」事業は料金負担が少なく、利用しやすい仕組みであり、全国的にもあまり例がないと事業だと思います。

この取り組みを進めながら、全国の参考例になればいいなと考えております。

今日は、貴重な情報を詳しくお聞かせいただきありがとうございました。



【小池紀徹(こいけ のりゆき)氏のプロフィール】

生活支援部 相談支援課 終活サポートセンター 所長

  • 2004年 福岡市社会福祉協議会入職。区社会福祉協議会での地域福祉推進に関する業務や介護サービスの第三者評価を行なう部署で勤務。
  • 2010年9月 判断能力が低下した人の権利擁護を担う「あんしん生活支援センター」に配属。日常生活自立支援事業や法人後見事業の運営に携わる。
  • 2016年 同センター所長。
  • 2021年 終活サポートセンター所長を兼任し、現在に至る。

【吉田時成(よしだ ときなり)氏のプロフィール】

生活支援部 相談支援課 終活サポートセンター 主任

発達障がい者の生活介護事業所の生活支援員を経て、2016年に福岡市社会福祉協議会入職。高齢者等の住み替えを支援する「住まいサポートふくおか」や空き家を福祉活用する「社会貢献型空家バンク事業」に従事。

現在は終活担当として、死後事務委任事業や終活相談窓口、終活出前講座の講師などに取り組んでいる。

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塚本 優(つかもと まさる)
終活・葬送ジャーナリスト。早稲田大学法学部卒業。時事通信社などを経て2007年、葬祭(葬儀、お墓、寺院など)を事業領域とした鎌倉新書に入社。月刊誌の編集長を務めたほか、終活資格認定団体を立ち上げる。2013年、フリーの終活・葬送ジャーナリストとして独立。 生前の「介護・医療分野」と死後の「葬儀・供養分野」を中心に取材・執筆活動を行なっている。

[塚本優]