年金の繰上げ支給をする前に検討すべきメリットとデメリット

[2018/5/13 00:00]

繰上げ支給をする前に、考えておいた方が良いこと

この記事を書いている2018年に60歳を迎える人は、1958年(昭和33年)生まれです。

この年代では、60歳になっても年金は貰えません。

1958年の4月生まれ以降について見ると、男性は64歳から、女性は61歳から、老齢厚生年金の報酬比例部分の受け取りが始まるまでは、年金の支給はありません。

そして、年金の本体と言うべき「老齢基礎年金」が受け取れるのは、65歳になってからです。

どうしても、60歳から年金が欲しいときは、「老齢基礎年金の繰上げ支給」を申請することになります。

実際に、2016年(平成28年)に年金を受け取り始めた人のうち、「9.2%」は繰上げ支給を選択しています。

ただし、年金の繰上げ支給には、利点と欠点があります。

この記事では、あなたが繰上げ支給をするべきかどうか考える材料として、繰上げ支給のメリットとデメリットを並べてみましょう。

出典:日本年金機構

繰上げ支給のメリット

繰上げ支給の主なメリットは次の通りです。

  • すぐにお金が手に入る
  • 本来の時期に76歳8カ月までは貰った年金の総額が多くなる

なんといっても、最大のメリットは、すぐに年金を受け取り始められることです。

現在、生活費に困っているのであれば、すぐに現金が手に入るのは魅力です。

もう1つのメリットは、ある年齢になるまでは、年金の支給総額が大きくなることです。

繰上げ支給をすると、毎月受け取る年金の金額は減ります。

しかし、5年早く受け取りを始めますから、あなたが76歳8カ月になるまでは、65歳から受け取り始める場合よりも、年金を多く受け取れます。

日本の年金制度の将来に不安を抱いている場合には、「制度が崩壊したり、極端に減額される前に少しでも現金が受け取れる」ということもメリットとして数えられるでしょう。

繰上げ支給のデメリット

しかし、繰上げ支給には、次のような欠点があります。

  • 繰上げ支給をすることで、年金が一生涯減額される。
  • 障害基礎年金を請求することができない。
  • 寡婦年金が支給されない。既に寡婦年金を受給していても権利がなくなる。
  • 65歳になるまで遺族厚生年金・遺族共済年金が併給できない。

まず、大きいのが「年金の減額」です。

例えば、国民年金の場合、65歳からの支給で満額の場合は年間779,300円(2018年度)になります。

これが60歳から繰上げ支給にすると、30%減額されて年間545,510円になります。

また、一度減額されると、一生そのままの金額になります。

65歳になっても、元の金額には戻りませんから、注意してください。

「障害基礎年金が受け取れなくなる」のも、大きなデメリットです。

障害基礎年金は、一般には後遺障害をカバーする年金です。ペースメーカー、人工透析、在宅酸素などの病気による障害も対象になります。

ケガに限らず、精神疾患やガンなどの病気による受給も増えており、意外とカバーする範囲が広い年金なのです。

「寡婦年金」は夫が、「遺族年金」は配偶者が亡くなった場合の年金にです。

とくに「寡婦年金」は妻だけが65歳まで受け取れる年金ですから、すでに受け取っている場合や受け取る可能性が高い場合は、繰上げ支給しない方が良いでしょう。

さらに、65歳未満で年金を受け取ることで、次のようなデメリットがあります。

  • 働きながら年金を貰う場合は「在職老齢年金」によって減額される
  • 65歳未満で年金を受け取る場合は、65歳以上で受け取る場合よりも所得税が高くなる。

「在職老齢年金」は、働きながら年金を貰う場合に考慮する必要があります。65歳未満では、「毎月の報酬」と「年金の月額」の合計が「28万円」を越えると年金が減額されます。仕事をしていて、一定の収入がある場合は、よく検討してください。

「所得税」については、基礎年金だけなら、税率による差は数百円ですので気にする必要はありません。「報酬比例部分」の受け取りがあり、金額が大きい場合のみ気にすれば良いでしょう。

繰上げ支給を申請する場合は、早くお金が貰えるというメリットと、これらのデメリットを考慮して決めなければなりません。

「すぐにお金が貰える」というだけなら、みんながやるはずですが、全体の1割の人しかやっていないということは、それなりにデメリットが大きいことが分かっているからです。

迷ったときは、日本年金機構の窓口に相談に行って、繰上げ支給した場合と、本来の金額を計算してもらいましょう。

実際に繰上げ支給で貰える金額を見ると、気持ちが変わるかもしれません。

【お知らせ】この記事は、2018年5月13日に内容を更新しました。

[シニアガイド編集部]