介護のために転職をすると、年収が4割以上減る
介護はあっても収入も必要
「介護離職」というと、これまでの勤めを辞めて、介護に専念するという印象があります。
しかし、生活費のことを考えると、まったく仕事をしないで介護に専念することできる人は多くありません。
そのため、介護と仕事を両立できる仕事を求めて、転職することになります。
介護によって転職した正社員の実情
介護による転職については、2014年に明治安田生活福祉研究所と、ダイヤ高齢社会研究財団が行なった共同調査のレポートがあります。
この調査は、「正社員だった人の、介護による働き方の変化」を見ることを目的にしています。
インターネット調査では、40歳以上で介護を始めたときに正社員だった人という条件が付いています。有効サンプル数は2,268人でした。
このうち、介護のために転職した人は、男性412人、女性155人です。
少し前の調査ですが、印象的なレポートで、介護によって離職を考えている人には、必読と言って良い内容です。
この記事では、その一端を紹介します。
「正社員」に転職できる人は少ない
介護のために離職しても、正社員に転職できた人は多くありません。
男性で3割、女性は2割に留まっています。
特に女性は、「パート・アルバイト」への転職が半分以上を占めています。
年収は4~5割も減ってしまう
転職後は、働き方が変わることもあって、年収が下がります。
平均年収を見ると、男性の場合、転職前の556万円から341万円に、40%下がっています。
女性の場合は350万円から175万円に、50%下がっています。
つまり、年収は男性で4割減、女性は半額になってしまうのです。
いったん、介護離職をしてしまうと、働き続けていても、年収が大幅に減ってしまうことが分かります。
介護の時間を増やすことはできるが
では、介護転職の目的である、介護に時間を割くことはできているのでしょうか。
「仕事のある日の介護時間」の変化を見てみましょう。
男性の場合、それまで1.8時間だった介護時間が、3.4時間に増えています。
女性も同様に、2.2時間から4.0時間へと増やすことができました。
しかし、「離職」せずに、同じ会社で働き方を変えた人でも、同じぐらいの時間を介護に割くことができています。
ここで言う、働き方を変えるとは、「フルタイムからパート」や「総合職から一般職や地域限定職」への変更を指しています。
勤めている会社を活用することで、転職した場合と同じような状況を作り出すことができるのです。
離職する人は判断が早すぎる
介護転職をした人の親は、どんな状態なのでしょうか。
離職時の親の介護認定状況を見ると、「認定を受けていない」または「わからない」という人が20%以上います。
介護認定は、介護保険を利用するためには必須で、これからの長い介護生活の基礎となる知識です。
つまり、「認定を受けていない」という状況は、介護に対して、何も準備ができていないのと同じです。
この状況で離職してしまうのは、あまりにも判断が早すぎると言って良いでしょう。
また、介護開始から離職までの期間を見ても、男女とも50%以上の人が、介護開始から1年以内に離職しています。
介護の場合、治療やリハビリが始まると、短期間で状況が大きく改善される場合があります。
また、1年目であれば、有給休暇や介護休暇、介護休業などの制度も利用できる日数が多く残っています。
やはり、離職を判断するのは、1年以上は見たいところです。
できることをやってから考えよう
介護のために離職をしてしまうと、再就職できても、年収が大幅に減ってしまうことが分かりました。
介護と両立しながら、働き続けても同じ年収を得ることは難しいのです。
まず、会社の人事担当者に相談して、地域包括支援センターへ行く時間を作り、介護認定の取得の手続きを始めましょう。
介護が始まった直後は、「自分以外に介護をする人がいない」「これ以上会社にいると迷惑がかかる」と考えがちです。
しかし、会社や地域包括支援センターに相談して、第三者が関わってくることで、状況も変わってきます。
せめて、介護認定が下りて、介護生活の見通しが付くまでは、離職せずに踏みとどまりましょう。