月々2千円で、「見守り」と「死後の処理」を提供する中野区の新制度

[2019/1/2 00:00]

中野区が始める単身者向けサービス

東京都中野区は、2019年1月下旬から「中野区あんしんすまいパック」を導入します。

「中野区あんしんすまいパック」は、賃貸住宅に単身で暮らす区民に、電話による安否確認と、万が一の際の補償を提供するサービスです。

この記事では、サービスの内容と、その位置づけを紹介します。

3つのサービスをパッケージ

「中野区あんしんすまいパック」は、次の3つのサービスをまとめたものです。

  • 見守りサービス
  • 利用者が亡くなった際の葬儀対応と費用の補償
  • 利用者が亡くなった際の残存家財片付けと費用の補償

一つずつ内容を紹介しましょう。

電話を利用した「見守りサービス」

見守りサービスは、電話を利用しています。

週2回、指定した曜日と時間に、利用者に電話がかかってきます。

電話は自動音声で「本日の体調はいかがでしょうか、ボタンを押してください」などとガイドします。

利用者はガイドに従って、電話機のボタンを押します。

電話機を操作した記録は、指定の連絡先にメールで通知されます。

連作先は、申込者を含めて最大5人まで登録できるので、管理会社や家主(大家)、家族、友人などに結果を知らせることができます。

出典:中野区

利用者が亡くなった際の葬儀対応

契約期間中に、利用者が死亡した際には、次の対応が行なわれます。

  • 葬儀にかかる手配の実施
  • 葬儀費用の補償(上限50万円)

つまり、身寄りがない人でも、葬式を出してもらうことができます。

残された家財の片付け

契約期間中に、利用者が死亡した際には、次にような対応が行なわれます。

  • 部屋に残された家財の片付けと、原状回復の手配
  • 片付け費用の補償(葬儀費用と合わせて100万円以内)

例えば、孤独死によって、部屋が傷んだ場合でも、業者が入って修復が行なわれます。

毎月の費用は「1,944円」

「中野区あんしんすまいパック」の費用は、次の通りです。

  • 初回登録料:16,200円
  • 月額利用料:1,944円

初回登録料については、中野区によって全額補助されます。

加入者の負担は、月に2,000円ぐらいですから、万が一のための保険と思えば、割安な値段に見えます。

中野区でも「初期費用として預託金を数十万支払わなくてはならない事例もあるが、今回は比較的に安く加入しやすい料金設定になっている」としています。

加入するための3つの条件

「中野区あんしんすまいパック」を利用できる人は、次の条件を満たす必要があります。

  • 区内の民間賃貸住宅に単身で居住し、または区内の民間賃貸住宅に単身で転居しようとしている
  • 本制度の開始後に、本制度に関わる民間事業者のサービス契約を結んだ
  • 前年の所得額が「256万8千円」以下

つまり、中野区内の賃貸住宅で一人暮らしをする人が対象で、収入が所得制限を下回る必要があります。

ちなみに、「256万8千円」という制限は、単身高齢者の公営住宅入居資格と同じです。

部屋を借りやすくするための手段

中野区は、どうして「中野区あんしんすまいパック」のようなサービスを用意したのでしょう。

その目的は3つあります。

  • 単身高齢者等の入居拒否の解消
  • 比較的リーズナブルなサービスが付加された賃貸住宅の普及
  • 空き部屋の利用促進

つまり、「空いている部屋は埋めたいけれど、孤独死が怖いから単身高齢者には貸したくない」という家主の不安を、この制度でやわらげようというわけです。

出典:中野区

また、入居者にとっても、「自分が死んだ後で、誰が葬式を出してくれるのだろう」という不安を逃れることができます。

この制度は、入居者、オーナーの両者にとってメリットがあると言えるでしょう。

今後の発展に期待

現在、「中野区あんしんすまいパック」が契約しているのは、「ホームネット」という会社だけで、提供するサービスも1種類だけです。

しかし、今後、サービスを提供する会社が増えることで、選択肢が広がる可能性があります。

ホームネット自体も、「合鍵を預かって現場確認をするサービス」や「緊急通報するサービス」を提供しているので、サービスの幅を広げることもできるでしょう。

また、この制度の特徴として、年齢制限がないことが挙げられます。

高齢者に限らず、身寄りが無い人や、一人暮らしの不安を抱えながら生活している人にとって、安価なセーフティネットとなります。

中野区は、「中野区あんしんすまいパック」について、初年度に40人分の予算を用意しています。

そして、今年限りではなく、今後も継続する制度と位置づけています。

実績を積み重ねることで、他の自治体でも、同様の制度の導入が検討されることを望みましょう。

[シニアガイド編集部]