もう一度送ってくる「扶養親族等申告書」を提出して所得税を減らそう

[2019/2/11 00:00]

年金にも、額面と手取りがある

老齢年金は、偶数月の15日に、2カ月分をまとめて振り込まれます。

振り込まれる金額は、老齢年金の“額面”の金額そのままではありません。

本来支給される年金の金額から、税金や社会保険の保険料などが“天引き”された金額が振り込まれます。

つまり、振り込まれる年金は、給与で言えば“手取り”の金額なのです。

会社員の給与も、額面と手取りでは差がありますが、それと同じことが年金でも行われているのです。

出典:シニアガイド編集部

天引きされる税金を計算するための「扶養親族等申告書」

では、“天引き”される税金の金額は、どうやって計算されているのでしょうか。

これは、年に1度送られてくる、「扶養親族等申告書」という書類をもとにして計算されています。

「扶養親族等申告書」に書かれた、配偶者の状態や扶養家族の数などを把握することで、所得税などの金額が決まるのです。

「扶養親族等申告書」は、会社員が年末調整のときに提出する書類にあたると思えば良いでしょう。

なお、「扶養親族等申告書」が送られてくるのは、もらっている年金が所得税の対象となる人だけです。

具体的には、「65歳未満の方で年に108万円以上」「65歳以上で年に158万円以上」の老齢年金を受け取っている人が対象です。

国民年金の老齢基礎年金を受け取っている人は、満額で約78万円ですから、「扶養親族等申告書」は送られてきません。届かなくても不安になる必要はありません。

「扶養親族等申告書」のスケジュール

「扶養親族等申告書」は、毎年9月に送られてきます。

そして、10月末が締切になっています。

「扶養親族等申告書」の内容が反映されるのは、翌年の2月に振り込まれる年金からになります。

「扶養親族等申告書」を出さないとどうなるか

「扶養親族等申告書」が届いたのに、返送しないで放置していると、何が起こるのでしょう。

簡単に言えば、振り込まれる年金の金額が減ります。

「扶養親族等申告書」を提出しないと、所得税法等の規定により年金から天引きされる所得税の税率が「10.21%」になります。

それが、「扶養親族等申告書」を提出すると、所得税が「5.105%」と半分になります。

「扶養親族等申告書」という書類1枚を出すだけで、天引きされる税金が半額になるのです。

さらに、「配偶者控除」や「扶養者控除」に該当していれば、その分も税金が安くなります。

「扶養親族等申告書」を出さないのは、とてももったいない話なのです。

今年はもう一度送ってくる

2019年は、1月25日までに「扶養親族等申告書」を提出していないと、2月中に、もう一度送ってきます。

これは、去年、「扶養親族等申告書」を提出しなかった人が多かったので、その対策です。

具体的には、2月8日から郵送が始まっているので、そろそろ届き始めるでしょう。

先に述べたように、これを提出するかしないかで、所得税が2倍違います。

再送されてきたら、ちょっと頑張って提出しましょう。

「所得」を記入するときは気をつけよう

「扶養親族等申告書」の記入は、住所、氏名、マイナンバーなどが中心なので、そんなに難しいことはありません。

ただし、「年間所得の見積額」だけは、注意して記入する必要があります。

「年間所得の見積額」は、配偶者や扶養家族の欄にあります。

出典:日本年金機構

配偶者の場合、基本的には○(マル)をつけるだけで良いのですが、例えば「配偶者が65歳未満で、年金額が108万円を超えている」に当てはまる場合は、「年間所得の見積額」を記入する必要があります。

ここで、注意が必要なのは、記入するのは「所得」であって、「収入」ではないことです。

「所得」は、「収入」から「控除」を引いた金額です。

例えば、配偶者の年金額が「120万円」だとします。

これは、「収入」なので、「控除」を引いて「所得」を計算する必要があります。

間違っても、収入のまま「120万円」と書いてはいけません。

収入が年金の場合は、「公的年金等控除」があるので、下の表を見て計算します。

受け取る年金額が「120万円」ならば、控除額は「70万円」になります。

つまり、120-70=50で、「年間所得の見積額」は「50万円」と記入します。

出典:日本年金機構

同じように、給与の収入があった場合は、下の表を見て計算します。

例えば、配偶者がパートで「40万円」の給与収入があったときは、「給与所得控除」が65万円になります。

つまり、40-60=-20ですから、「年間所得の見積額」は「0円」です。

うっかり「40万円」と書いてしまうと、税金が増えてしまいます。

また、配偶者以外の扶養家族の場合、所得が大きくなると、扶養家族と認めてもらえなくなってしまいます。

『「所得」と書いてあったら、「収入」から「控除」を引いて計算する』と覚えてください。

出典:日本年金機構

所得税を取り戻すためにがんばろう

繰り返しになりますが、「面倒だから」と言って「扶養親族等申告書」を提出しないと、税金が増えて、みすみす損をします。

提出さえすれば、少し遅くなっても、その年の分はさかのぼって精算してくれます。

「扶養親族等申告書」を提出して、本来よりも高くなっていた税金を取り戻しましょう。

記入について分からないことがあれば、同封されている書類を見てください。

どうしても分からないときは、問い合わせ先の電話番号も記載されています。

[シニアガイド編集部]