国保加入者の4割以上は「無職」。6割が保険料の軽減を受けている

[2019/4/13 00:00]

他の制度に加入していない人の受け皿

「国民健康保険」は、日本の健康保険制度の1つです。

以下、この記事では、「国保」と略します。

国保の対象者は、職場の健康保険や後期高齢者医療制度の加入者と、生活保護を受けている人以外になります。

つまり、国保は「他の保険制度に加入していない人」の受け皿であり、日本の医療保険制度の最後の砦なのです。

この記事では、厚労省による「国保調査報告」を基にして、国保の現状についてグラフを中心に紹介します。

加入率が30%を切った

日本では、75歳以上の人は「後期高齢者医療制度」に加入することが前提なので、国保の加入者は0歳~74歳が対象です。

この年齢の人口が約1億8百万人で、うち3千万人が国保に加入しています。

【お詫びと訂正】初出時に、0~74歳の人口を「1億8千万人」と誤っていました。お詫びして訂正させていただきます。

これをもとに加入率を計算すると、「28.6%」になります。

3年前までは、国保の加入率は30%を超えていました。

しかし、2016年10月にパートで働く人の一部が社会保険に加入できるようになったので、30%を切っています。

出典:データを基に編集部が作成

全体の9割は「市町村国保」

国保には、地方自治体が主体となっている「市町村国保」と、特定の職業などについている人が組織している「国保組合」の2種類があります。

加入者数で見ると、全体の90%以上を「市町村国保」が占めています。

国保組合の加入者はあまり多くありません。

ここからは、全体の9割を占める「市町村国保」のデータを見ていくことにします。

出典:データを基に編集部が作成

加入者は中高年が多い

市町村国保の加入者の年齢は、「65~74歳」が多く、40%以上を占めています。

そして、二番目に多いのは「40~64歳」でした。40歳以上の加入者の合計は70%以上にもなります。

国保の加入者は、中高年が多いのです。

出典:データを基に編集部が作成

定年退職をきっかけに国保に移る人が多い

国保の年齢別の加入率を見ると、「65~74歳」が70%を超える高い加入率となっています。

これは、60歳前後の定年退職によって、職場の健康保険を脱退した人が、国保に流れ込むためです。

国保が、職場の健康保険を抜けた人の受け皿になっていることが分かります。

出典:データを基に編集部が作成

一番多い職業は「無職」

国保に加入している世帯の、世帯主の職業を見てみましょう。

一番多いのは「無職」で、40%を超えています。

これは、定年退職して年金で暮らしている高齢者が中心です。

次に多いのが、会社員などの「被用者」でした。

例えば、従業員が5人未満の個人事業や、会社が社会保険の加入を逃れている場合の従業員などが、これにあたります。

ただし、社会保険/厚生年金の適用範囲は広がっていますので、今後は「被用者」は少なくなるでしょう。

国保の対象として「自営業」と「農林水産業」が挙がることが多いのですが、実際には「無職」と「被用者」の方が多いのです。

出典:データを基に編集部が作成

加入者の6割が「軽減制度」を利用している

国保には、収入の状況によって保険料を軽減する制度があります。

そして、加入者の60%が、この制度を利用しています。

軽減制度を利用せずに保険料を払っている人は、全体の40%しかいません。

国保に加入していて、金銭的な余裕がない場合は、「軽減制度」を利用して保険料を抑えましょう。

保険料の軽減には、住民税の申告などの手続きが必要な場合もあります。もよりの役所の窓口へ相談に行きましょう。

払えないからと言って「未払い」で放置しても債務は無くなりません。軽減を受けた上できちんと払う方が、自分にとっても制度にとっても良い選択なのです。

出典:データを基に編集部が作成

サラリーマンも退職後は頼る存在

国保は、他の健康保険制度に加入していない人の受け皿となっているため、弱い立場の人が多く、軽減制度を利用している人も少なくありません。

現在は、勤め先の保険に加入している人や、その家族も、最後は国保に頼らなければならないのですから、ひとごとではありません。

国民皆保険制度の最後の砦として、国保を維持する必要があるのです。

国保の制度を維持するために、2018年4月に制度が大きく変わり、都道府県がかかわるようになっています。

現在、国保の保険料は、市町村ごとに制度や金額が異なっています。

しかし、あと数年で「同じ所得、世帯構成であれば、県内のどこに住んでいても同じ保険料になる」ことを目指しています。

県内の極端な地域差が解消され、わかりやすく統一された制度になることを期待しましょう。

[シニアガイド編集部]