退職後に任意継続した場合の健康保険料は月額「3万円」が上限

[2019/2/14 00:00]

国保か任意継続かで迷う

あなたが勤めていた会社を退職すると、会社の健康保険は使えなくなります。

すぐに、別の会社に就職した場合は、転職した会社の健康保険に加入します。

また、家族に会社の健康保険に入っている人がいて、その人の健康保険に被扶養者として入れれば、保険料を払う必要がいりません。加入条件を調べてみましょう。

それ以外の場合は、「健康保険を任意継続する」か、「国民健康保険(国保)に加入する」の、どちらかを選択することになります。

では、「任意継続」と「国保」のどちらにするかは、どう決めれば良いのでしょう。

一般的には、「医療費の自己負担分は3割」という規程は同じなので、2つの保険料を比較して、安い方にする人が多いようです。

しかし、「任意継続」の場合、在職中とは保険料の計算方法が変わるので、在職中の健康保険料と同じではありません。

これまでの保険料と同じと考えていると、判断を間違える可能性があります。

この記事では、「任意継続」の保険料を計算するルールと、上限の目安となる金額を紹介します。

在職中は保険料の半分を会社が負担している

会社の健康保険には、「協会けんぽ」と「組合健保」の2つがあります。

まず、加入している会社が多い「協会けんぽ」について、在職中の健康保険料の金額の決め方を紹介しましょう。

会社の健康保険の場合、毎月の給与などから計算する「標準報酬月額」という金額に、その都道府県で決まっている保険料率を掛けて計算します。

自分の「標準報酬月額」は、所属している会社の総務部門に聞くのが手っ取り早いでしょう。

例えば、自分の「標準報酬月額」が「30万円」の場合、保険料率は「10%」が目安なので、保険料は月額「3万円」です。

在職中は、会社が保険料を半分負担してくれるので、自分が払う健康保険料は月額「1万5千円」になります。

退職すると、全額が自分の負担となる

「任意継続」の場合も、健康保険料を決めるルールは同じです。

しかし、会社を退職しているので、会社が負担していた分も自分で負担することになります。

さきほどの「標準報酬月額」が「30万円」の例で言えば、自分が払う保険料は「1万5千円」ではなく「3万円」になります。

しかし、それではあまりにも負担が重くなるので、「標準報酬月額」に上限が設けられています。

任意継続すると、負担の割合は増えるけれど、計算する基礎となる金額に上限が設けられるわけです。

この上限は、「被保険者の標準報酬月額の平均額」と定められているので、年によって変わります。
加入している会社数が多い「協会けんぽ」では、2018年度は「28万円」でしたが、2019年度は「30万円」です。

ここでは、「30万円」で計算しましょう。

在職中にいくら高給を取っていても、標準報酬月額は「30万円」で止まりますから、月額の保険料は「30万円」×10%で「3万円」が上限となります。

国保と比較しやすいように、年額で言うと「36万円」が上限です。

国保の制度は市区町村単位で異なる

次に、任意継続と比較する「国保」の保険料について見ていきましょう。

国保の保険料は、市区町村単位で決められています。

一般的には、収入に応じて決まる「所得割分」と、家族の人数で決まる「均等割分」があるので、家族の人数によっても変わります。

その上、所得割分の料率などは、自治体によって大きな差があります。

よって、ここで簡単に説明することができません。

まず、自分が住んでいる市区町村の名前と「国保」で検索し、「国民健康保険料の計算方法」を探してみましょう。

それでも分かりにくい場合は、市区町村の窓口に相談すれば教えてくれます。

任意継続は、退職日の翌日から20日以内に手続きをしなければならないので、あまり迷っている時間はありません。早めに行動しましょう。

さきほど計算した、社保の任意継続の保険料の目安である、月額「3万円」、年額「36万円」という金額を覚えておけば、国保とどちらが安いか、その場で判断できます。

会社の保険料は都道府県単位で異なる

「任意継続」と「国保」のどちらが良いか判断するためには、もう2つ覚えておくことがあります。

まず、「協会けんぽ」では、都道府県単位で保険料が異なります。

さきほどは、保険料率を「10%」という目安で計算して、月額が「3万円」としました。

しかし、会社の所在地によって、保険料率には1%近い差があります。年度が変わったタイミングで確認しましょう。

なお、協会けんぽでは任意継続の保険料を、まとめて前払いできます。

割引になるので、1年分前払いすると、数千円安くなります。任意継続する場合は、退職金などで前納することも検討しましょう。

「組合健保」の任意継続の長所と短所

もう1つ覚えておく必要があるのは、会社の健康保険が「協会けんぽ」ではなく、「組合健保」だった場合の判断です。

「組合健保」は、大企業と、そのグループ企業が中心になって設立されています。

自分の会社の健康保険証を見て、保険者名称の欄に「健康保険組合」と書いてあれば「組合健保」です。

赤枠で囲った部分に「組合」とあれば「組合健保」

「協会けんぽ」との違いを簡単に言えば、「組合健保」の方が、保障が手厚くなっています。

特に魅力的なのが、「付加給付」です。

入院や手術などで、高額な医療費がかかった場合でも、1カ月の自己負担分は「2万円」か「2万5千円」が上限になります。

「協会けんぽ」や「国民健康保険」にも「高額療養費制度」はありますが、「付加給付」の方が、ずっと負担が軽くなります。

大きな病気やケガをしたときには、「組合健保」の「付加給付」のありがたみが分かります。

さらに、「特例退職被保険者制度」と言って、75歳まで加入し続けることができる制度を持っている組合健保もあります。

一般的には「任意継続」できる期間は「2年間」と決まっています。

しかし、「特例退職被保険者制度」があれば、後期高齢者医療制度の対象となる75歳まで、健康保険に加入し続けることができます。

このように「組合健保」は任意継続したくなる利点が多いのです

しかし、組合健保ならではの欠点もあります。

それは、「標準報酬月額」の平均が高いことです。

例えば、ある健保組合では、平均標準報酬月額が「44万円」でした。

協会けんぽでは「30万円」ですから、大きな差があります。

「組合健保」は、大手企業の社員が組合員ですから「平均報酬月額」が高いのです。

これが、退職後の健康保険料の上限の計算に使われるので、現役時代に標準報酬月額が高かった人は、任意継続の健康保険料が下がりません。

結論としては、在職中の会社の保険が「組合健保」であれば、任意継続を前提にして考えた方が良いでしょう。

ただし、標準報酬月額が高かった人は、健康保険組合のホームページで、任意継続の際の保険料の上限をチェックしてください。

保険料率にもよりますが、高給取りだった人は、月額の保険料が4万円を超え、年額で50万円前後の金額になる可能性があります。

家族構成なども考えて試算を行ない、国保とどちらにするか慎重に検討しましょう。

【お知らせ】この記事は、2019年2月14日に内容を更新しました。

[シニアガイド編集部]