第50回:LINEで遺志をまとめるサービスが2カ月で1万人を集める――ウィズコロナ時代の終活

[2020/6/29 00:00]

1年前に、この連載の「いつか死んだとき、きちんと発動すると信じて良いか――デジタル終活3サービスを観察する」で採り上げたとおり、自分の死後に発動する仕掛けを備えたデジタル終活サービスはここ数年でじわじわ伸びてきています。

その動きがここ数カ月で加速した感があり、同種のサービスのリリースが立て続けに起こり、短期間で大きな反響を得た例も出てきています。ウィズコロナ時代となったいま、改めてデジタル終活の可能性を見ていきましょう。

2カ月で1万ユーザーを突破した「タイムカプセル」

象徴的なサービスが、大阪府のライフエンディング企業「ユニクエスト」がリリースした『タイムカプセル』です。2020年3月末にリリースし、2カ月で1万ユーザーを突破しました。

LINEでタイムカプセルとつながり、質問に答えていくうちに資産情報や延命の遺志、葬儀の希望、特定の相手へのメッセージなどを設定していける無料サービスとなります。

質問には気が向いたときに少しずつ答えていけばよく、答えた内容は項目分けして保存してくれる仕組みです。利用していくうちに無理なくエンディングノートが作っていけるのが特長といえるでしょう。

LINEで質問に答えていくことで、緊急時や死後の希望や必要事項が蓄積されていく
タイムカプセルのユーザーホーム画面

死亡認定はあらかじめ情報の受取人に指定された人の行動に委ねられます。

受取人が自身の本人確認書類とともに、ユーザーの死亡を確認できる公的な書類の画像をLINEで送ると、同社が情報を確認します。

その情報によって死亡と判断されたとき、事前に指定された設定に従って公開される仕組みです。判断にかかる目安は3~4営業日となります。

LINEアカウントは一身専属性のため、ユーザーが亡くなると権利が消滅します。その後もメッセージは残りますが、紐付いていた電話番号が解約後に別の人のものになり、その人がLINEを始めたらリセットされる見込みが高いです。

LINE自体は死後のメッセージを託す媒体としては不向きなのですが、タイムカプセルで入力した内容は同社のサーバーで保管しているため、アカウントが消失したあとも内容の開示に支障はないそうです。

受取人はLINEでつながっているIDを指定し、相手が応じることで登録される

なお、7月10日に民法の改正により法務局が自筆証書遺言を預かる仕組みが始まります。これを受けて7月下旬には自筆証書遺言の作成支援機能を追加するとのことです。

自筆証書遺言は規定の様式に則って本人が手書きして作成します(一部資料は例外あり)。タイムカプセルに入力した情報をもとにその様式に沿った文章を生成し、あとは書き写して適所に署名・捺印することで、法的効力のある遺言が作成できるようにするそうです。

緻密な安否確認体制を敷く「ラストメッセージ」

タイムカプセルと同じ2020年3月には、東京のIT企業「パズルリング」が『ラストメッセージ』という、あらかじめしたためた文章を死後(あるいは意思表示ができなくなった後)に発信するサービスをリリースしています。

2020年9月までは無料で利用でき、6通以上のメールを保管している人は同年10月以降に月額100円となります。1アカウントで使える容量上限は300MBです。

ラストメッセージのユーザー画面

ユーザーはメッセージや添付ファイルを設定するとともに、死後の確認協力者(トラスティ)を指名するなどの準備を進めるのが基本線となります。

同社はメッセージを保管するとともに、ユーザーの生存確認をバックグラウンドで実施します。

一定期間ログインしていないユーザーに確認メールを1週間ごとに3回送り、その後の電話連絡でも安否が確認できない場合にトラスティに協力を要請する流れとなります。

トラスティが未指定の場合はメールや電話での確認を続け、都合3カ月後にラストメッセージを発信するとのことです。

メッセージ発信までの過程を「終焉日確定プロセス」と呼んでいる

登録者数は非公開ですが、5月の登録者数は前月比で1.5倍となっており、着実に利用者を増やしている様子です。

発動後のノウハウが蓄積するこれからに期待

ラストメッセージがリリース文の冒頭で「いま世界では、家族が亡くなっても会いに行けないほどの緊急事態が生じています」と掲げているように、最近は新型コロナウイルス後の生活様態にあわせた終活サービスが急速に増えているように思われます。

そして、需要も確実に高まっているように感じます。

とくに印象的なのは、タイムカプセルが開始から2カ月で1万ユーザーを突破したことでした。

2014年にYahoo!が終活サービス「Yahoo!エンディング」内で死後発動サービス「ヤフーの生前準備」をリリースして話題を集めましたが、ユーザー数が数千人に留まり、2年足らずで終了に至ったという例があります。(関連記事 参照)

さまざまな条件が異なりますが、当時と比較するとオンラインを終活に生かすことがごく普通の選択肢になってきているのかもしれません。

両サービスとも始まったばかりということもあり、ユーザーが亡くなってサービスが発動したケースはまだ0件です。死後の発動件数が増えてノウハウが蓄積していくのは長い目で見る必要があるでしょう。それを踏まえて、信頼に足るサービスの成長をウォッチしていくのが良さそうです。


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古田雄介(ふるた ゆうすけ)
1977年生まれのフリー記者。建設業界と葬祭業界を経て、2002年から現職。インターネットと人の死の向き合い方を考えるライフワークを続けている。著書に『故人サイト』(社会評論社)、『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)など。2020年1月に、『スマホの中身も「遺品」です』(中公新書ラクレ)を刊行した。

[古田雄介]
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