第31回:2019年の動向も見据えつつ、デジタル資産を大掃除

[2018/12/25 00:00]

ちょうど1年前、2017年年末に「年の瀬に最短30分でデジタル資産を整理する」と名打って、デジタル資産の手軽な整理法をお伝えしました。

今年も大掃除といきたいところですが、デジタル資産周りの環境は短期間で大きく変わります。始める前に、2018年の変化と2019年に予想される動きを俯瞰してみましょう。

2018年は、個人情報の扱いが大きく変化した年

2018年は、個人情報の位置づけが世界中で大きく変わった1年といえます。

オンライン上での閲覧履歴や購入履歴を含むユーザーの個人情報は、これまでサービスを提供する企業が比較的自由に活用できていましたが、ここ1年の間に「個人情報は個人のもの(あるいは国家のもの)」という考えが主流になりました。

象徴的なのが、5月に施行されたEUの「GDPR(一般データ保護規則)」です。

EU圏に住む人たちの個人情報を企業が勝手に圏外に持ち出すことを防ぐ狙いがあり、不名誉な過去を検索されなくする権利(忘れられる権利)や、あらゆる履歴をAI等で分析して個人の傾向をあぶり出す行為(プロファイリング)の中止を請求できる権利なども盛り込んでいます。

こうした法整備の動きは中国やシンガポールなどでもみられ、日本もGDPRに適うルール作りを進めています。

GDPRに先だって2018年4月にアップデートされた、「Apple IDとプライバシー」情報

一方で、ユーザーの許可を得たかたちで堂々と個人情報を活用しようという取り組みも進められています。国内を見回すと、「情報銀行」という個人情報を仲介するサービスを作る動きが活発化しています。

来年以降は「年齢と性別、地域と行動履歴だけ情報銀行に預けて、企業からポイントをもらおう」といったことが普通になっているのではないでしょうか。

こうした動きにより、個々人が所有するデジタル資産のなかで、閲覧履歴や購入履歴、各種サービスに登録した個人情報などのデータの管理責任者は、企業から個人に移ったと捉えたほうが良さそうです。

裏を返せば、使わなくなって放置しているサービスのアカウント情報や、ブラウザに蓄積しているアクセス履歴や検索履歴などが持つ意味は1年前より重くなったともいえます。

2019年は、スマホの財布化が加速する年

2019年に向けた国内の動きとしてもうひとつ注目したいのは、キャッシュレス化です。

2020年の東京五輪に向けて、政府が世界から遅れをとっているキャッシュレス化の動きを推進しているのはご存知のとおり。

消費増税後の景気対策として、2019年10月から9カ月間はキャッシュレス決済により5%還元を実施する計画がありますし、給与支払いで銀行を通さなくてよくなる法案を国会に提出する予定も立てています。

そうなると、お店で買い物したり給料を管理したりするのに使われる主役はスマートフォンということになりそうです。

それに加えて、前述のように端末に集約された個人情報の管理も意識する機会が増えるでしょう。いわば、スマートフォンの財布化です。

お金やクレジットカード、ショップのポイントカードに運転免許証……それらの代替ツールとして、ますます存在感が大きくなるはずです。パソコンやタブレットも連動して重要度が増すはずですが、中心となるのはやはりスマートフォンとなるでしょう。

その一方で、故人のスマートフォンを遺族に受け渡す枠組みの整備はいまだ不十分です。

キャリアはショップなどを通して故人のスマートフォンの契約解除に応じてくれますが、ロックがかかった端末を開いたり中見をバックアップしたりといったことは請け負ってくれません。

ですから、元気なうちから自分がスマートフォン等をしっかり管理して、万が一のときに家族にパスワードが渡せるよう備えておく必要があります。その重要性はこれまで以上に高くなると予想されます。

2018年から2019年以降にかけての、デジタル資産絡みの国内外の動き

大切なものリストは印刷して貴重品保管所へ

では、これらの動きを踏まえたうえで、今年のデジタル資産の大掃除をしていきましょう。

基本的な流れは昨年と変わりません。「大切なもの」と「不要なもの」、「保留」メモを3枚用意し、下記の項目を振り分けていきます。

あまり細部はこだわらず、10分から30分程度でさっと書いていきましょう。

昨年の「大切なもの」と「保留」リストをお持ちの方はそれをベースに書いていくと作業が早いです。


    【1】自分のスマートフォンと携帯電話、そのパスワード
    【2】自分のパソコン、HDD、そのパスワード
    【3】ユーザーID(Apple ID、Googleアカウント、Microsoftアカウント)、そのパスワード
    【4】ネット銀行、ネット証券、ネット保険の口座情報
    【5】暗号資産(仮想通貨)のウォレットとパスワード
    【6】定額サービス、定額アプリ、報酬系サービスの情報
    【7】SNS、ブログ、ホームページの情報
    【8】その他、家族や同僚が求めるデータ
3つのメモの入力例。昨年と同様、手書きでも構わない。日付の記入は忘れずに

昨年から新規に追加したのは、【3】と【5】です。

【3】は端末を越えて持ち主であることを証明するIDです。端末にトラブルが発生したときに役立つので、できればメモしておきましょう。

【5】は、国会の答弁などで暗号資産(仮想通貨)の放置リスクがとりわけ高いことが判明したため、他の資産とは別立てとしました。所持している人は、必ずパスワードとセットでメモしておきましょう。

そのほか、【6】の定額サービスやアプリは、オフィススイートやウイルス対策など様々なツールが、買い切り型から定期支払い型(サブスクリプション型)に切り替わっているので、書き込む対象が増えているという人が多いかもしれません。

リストを書き終えたら、不要なサービスは片っ端から削除していきましょう。とくに有料サービスは月をまたぐ前に終了させておきたいです。今年の「保留」リストはそのままにして、昨年の「保留」リストから「大切なもの」に入らなかったものは、思い切って削除してしまうチャンスともいえます。

そして、「大切なもの」リストは紙にして、実印や預金通帳などの貴重品が入った引き出しに保管しましょう。自分に万が一のことがあった際、家族がそれを発見できる仕組みを作っておくわけです。

そのうえで、隠しておきたいデータは、家族が辿りうる導線上から外す方向で整理していくのが効率的だと思います。

大切なものリストを旧版から新版にリフレッシュ。


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古田雄介(ふるた ゆうすけ)
1977年生まれのフリー記者。建設業界と葬祭業界を経て、2002年から現職。インターネットと人の死の向き合い方を考えるライフワークを続けている。書き手が亡くなった100件以上のサイトを追った書籍『故人サイト』(社会評論社)を2015年12月に刊行。2016年8月以降、デジタル遺品研究会ルクシー(http://www.lxxe.jp/)の理事を務めている。2017年8月にデジタル遺品解決のための実用本『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)を刊行した。

[古田雄介]