旦木瑞穂の終活百景
第十五景『遺品整理会社の先駆け 株式会社リリーフ』

[2016/12/20 00:00]

「遺品整理」という言葉をよく聞くようになりました。

「遺品整理」は、「遺品処理」「遺品処分」「遺品回収」とも呼ばれ、亡くなった方の持ち物を遺品として、それらを必要なものとそうでないものとに分けて、整理することをいいます。

今回は2011年に遺品整理事業をスタートさせた、遺品整理会社の先駆け、株式会社リリーフの取締役部長、赤澤知宣さんにお話を伺ってまいりました。

赤澤知宣 取締役部長

遺品整理会社リリーフとは

株式会社リリーフは、もとは兵庫県西宮市のゴミ収集会社でした。

リリーフのグループ会社である株式会社 大栄の前身、有限会社 大栄衛生がスタートしたのは1960年のこと。家庭ゴミや事業ゴミの収集が主な業務でした。

それから産業廃棄物処理事業、バイオマス燃料化事業、飲料系商品のリサイクル事業など、幅広い事業を展開し、おかたづけサービス事業としてスタートしたのが、現在のリリーフの始まりでした。

おかたづけ事業を始めた2011年当初は、遺品整理に関する問い合わせが1年に300件程度でしたが、それから約5年余りの間に徐々に増えて、現在は1年あたり2,000件を超えると言います。

「おかたづけ事業を始めて6年目に入りましたが、もともとおかたづけ事業だけグループの中でも仕事内容が特異だったことと、年々需要が高まり、規模が大きくなってきたことから、今年分社しました」

株式会社リリーフの取締役部長、赤澤知宣さんは言います。

同社は2015年4月にホールディングス体制に移行しました。

・西宮市の家庭ゴミや事業ゴミの収集を行なう株式会社 大栄
・伊丹市の家庭ゴミや事業ゴミの収集を行なう株式会社 大協
・産業廃棄物処理や飲料系商品のリサイクルなどを行なう株式会社 リヴァックス
・飲食店などの配管の受け皿に溜まる油を清掃する株式会社ダイキョウクリーン

2016年4月には、株式会社リリーフは、上の4社とともに、おかたづけや海外リユースを行なう、グッドホールディングスグループの一員となりました。

遺品整理が必要とされる背景

最近は、「親家片(おやかた)」という言葉が生まれるくらい、高齢の親が亡くなった後の、親が暮らしていた家や部屋の片付けが、その子ども世代の大きな金銭的/体力的負担やストレスとなって問題視されています。

高齢になると、持ち物が増えるだけでなく、身体が不自由になってくるため、思うように片付けや掃除をすることができなくなっていきます。

元気なうちに自分の手で整理しておいてもらえれば問題はないのですが、突然倒れて入院してしまうことや、そのまま亡くなってしまうことも少なくなく、遺族たちは、大量の遺品の整理や処分に手を焼くことになります。

「やはり依頼者は親を亡くされた方が多いですね。近くに身寄りがない方の場合は、遠い親戚の方から。ご夫婦のうちの一人が亡くなったため、『一人分だけお願いします』という依頼もあります。ご依頼をいただく方の多くは、ご自分も高齢のため『自分で片付けられないから』という理由が多いようです」

長寿化が進む昨今、90歳から100歳で亡くなった方の子どもは70~80代。さらにその子どもでも50~60代です。力仕事は体力的に難しい年齢になります。

一方で、60~70代で亡くなった場合だと、子どもは40~50代で働き盛りです。体力的には問題がなくても、仕事や子育てで忙しく、親の家の片付けに費やす時間を割きにくい状況です。そのような背景から、年々遺品整理の需要が高まってきたと考えられます。

関東と関西、都心と田舎の遺品整理事情

関西から関東まで、幅広いエリアでサービスを展開している同社ですが、地域に特徴はあるのでしょうか。

「西と東に大きな差は見られませんが、都心と田舎の差はありますね。都心には、土地や物件の持ち主の入れ替わりがあります。土地の売却に伴って、遺品整理をする。そこが大きな違いです。田舎だと買い手がつかないことも多く、荷物を放置しておくケースも少なくありません」

そもそも遺品整理を選択する遺族は、故人とは離れて暮らしている場合がほとんどなので、「きれいにして活用しよう」「片付けて売ろう」と考える人が多いようです。

また、固定資産税の問題や空き家問題、相続の問題も絡んできます。

相続対象者が1人なら特に問題はありませんが、2~3人いる場合、遺産を分けなければいけません。

例えば、相続する土地が2,000万円なら、1,000万円ずつ分けることになります。

一人が相続して、もう一人に現金で用意できればいいですが、そんな大金はすぐには用意できません。だから売却して、できたお金を分割しようと考えます。しかし、きれいにしなければ売ることもできません。

そして、故人が暮らしていた場所が賃貸だった場合は、退去しなければならない期限があります。

「時間的なリミットがあるというのが、遺品整理を依頼される大きな理由の一つですね。当社に依頼される方は、仮にも自分の親が住んでいたところなので、ゴミ処理業社に頼んで何もかも乱雑に捨てられるよりは、『きちんと整理してから処分したい』と思っている方が多いようです」

リリーフの遺品整理

同社は、遺品整理業界の先駆けです。小さな遺品整理業者が乱立する中、家庭ゴミ/事業ゴミを長年扱ってきたゴミのプロとして、「遺品処理」とは一線を画した「遺品整理」事業をスタートさせました。

「約5年前、遺品整理という言葉がメディアでも取り上げられるようになり始め、遺品整理業者が急激に増えました。当社はその中で、きちんとした仕事をして信頼される会社を作り、業界で模範的な会社になろうと考えてやってきました」

まず、同社は目安となる料金を明確に打ち出しました。同社のサイトには、部屋の広さごとの料金表が掲載されています。

「1DKで6万円からなど、目安の料金を提示しておりますが、ものの量やエレベーターの有無など、家によって状況は変わってきますので、事前見積もりによって料金は決まります」

遺品整理は、人件費とゴミの処分代が大部分を占めているため、「物がどれくらいあるか」「何人必要か」を見定める事前見積もりが重要だと言います。

「遺品整理業界の中で、『見積もりが10万円だったのに、思いの外に物が出てきたので、最終的には50万になりました』という『安く見積もりを出しておいて、高額請求を行なうトラブル』が多いんですが、当社は見積もり以上の料金の請求は、絶対に無いようにしています」

また、遺品整理で出たゴミは、地域によって分別方法や回収料金が異なります。同社では、地域ごとのゴミに関する知識や見積もりの正確な立て方はもちろん、遺族への対応の仕方など、マナーに関する社員教育にも力を入れているそうです。

遺品整理によって出た不用品たち

増えている特殊清掃

独居老人の増加によって、特殊清掃の必要な遺品整理の依頼も増えていると言います。

特殊清掃とは、遺体の発見が遅れた場合の、原状回復を行なう業務です。

「特殊清掃が必要なケースに関しても、田舎よりも住宅が密集している都会の方が、孤独死などが原因で発生する臭いや虫が問題になりやすいため、特殊清掃のご依頼は増えています」

「自宅で亡くなって時間が経っていても、誰かに気が付かれた時点でまずは警察が呼ばれ、事件性がないかを調べます。基本的には、警察が持って行くのは遺体だけなので、特殊清掃が必要になります」

最近では月に数件。夏場には週に数件あるそうです。

「独居の方だと、毎日誰かと接するということが少ないので、亡くなって数週間してからようやく気付かれる場合もあります。『最近見ないね』くらいならいい方で、『異臭がする』『虫がすごい飛んでる』など、近所で騒ぎが起きてからの発見になると、ドアを開けたらもう入れない状態になっていることも少なくありません。そうなると、遺族の方にはお手上げなので、業者に依頼することになります」

悲惨なケースは挙げればきりがなく、殺人事件の現場を経験したこともあると言います。

故人の遺品があり、整理を行なう前に片付けをすることは変わらないので、同社では特殊清掃も、普段遺品整理を担当しているスタッフが行なっています。

遺品整理業者選びの注意点

都心ほどゴミの処分代が高いと聞きます。それなら、処分代が安い自治体に持って行って捨てることはできないのでしょうか。

「小さな業者では、そういうことを、やっている業者もあります。もしかしたら知らずにやっている会社もあるかもしれません。しかし、自治体をまたいでゴミを運ぶことは、違法になります」

例えば、千葉県内の会社が東京都内の遺品整理の仕事をした場合、本来は東京都内で処分しないといけません。遺品整理によって出たゴミは、遺品整理を行なった自治体の中で処分するという決まりがあるからです。

「安さで業者を選び、何かトラブルがあっても保証はありません。特に、ゴミの法律は厳しいのですが、不法投棄の増加は国も問題視しており、摘発される業者が増えています。悪質な業者に依頼してしまうと、大事なご遺品が山林などに不法投棄されてしまう可能性があります」

遺品整理の需要が高まる現在、独居老人も空き家も増加の一途を辿っていますが、ゴミの法律や取り締まりはますます厳しくなっていくのでしょうか。

「厳しくしすぎると、根本的に遺品整理したい人ができなくなってしまう恐れもあります。ご遺品を整理し、不用品が出て処分する場合は、家庭ごみとなりますので、本来は行政が対応すべきところですが、行政ではそこまでできません。『市民はやって欲しいけど、行政がカバーしきれないこと』のギャップを埋めるのが、我々遺品整理業者だと思っています」

海外リユースでゴミを減らす

「遺品整理をすると、どうしても最終的には、処分するものが多くなります。ゴミの処分代は、皆さんが考えているよりずっと高くなります。家財の処分費だけで30~40万円というケースもざらです。ゴミ処分代に我々の作業代を加えると、50~60万円になってしまう場合も少なくありません」

特に都心部は処分代が高いため、遺品整理費用を減らそうと考えるなら、ゴミ自体を減らすのが効果的です。ブランドものなど、価値があるものは日本でも買い取ってもらえます。しかし、高齢者の持ち物の大半はタンスなどの家具や食器類、衣類です。

「新品であったり、ブランドものなどでない限り、国内では売れません。しかしこれらを海外に持って行ったところ、結構なニーズがありました。当社では現在、遺品整理で出てきた、不要だけどまだ使えるものを、リユース品として輸出しています」

同社では海外リユース事業を2013年からスタートしました。

事前見積もりを行なう時点で、処分するものと、リユースできるものとを分けて計算しています。

「海外リユースを行なう物品に関しては、販売価格がかなり安いので、買い取りではなく無償引き取りとなります。それでも、廃棄費用の削減効果は高く、お客さんの金銭的な負担の軽減となっています。お客さんは『買い取って欲しい』というよりも、『大切にしてきたものが捨てられるのが嫌だ』と思う人が多いです。特に、家具や衣類、食器類は、思い出に残りやすいので、『捨てられるよりは、誰かに引き取ってもらった方が嬉しい』と言われ、お客さんの心の負担も軽くなっていると感じます」

輸出先はタイ、フィリピン、カンボジアがメインで、場合によってはアフリカや中東などにも送られるそうです。

「その国の事情や法律によって、輸入できないものもあります。向こうのバイヤーとやりとりしながら仕分けを行い、オーダー通りにコンテナに入れて、輸出します」

輸出先は、実際に現地に行って、日本のものを売っている店を探すところから始めるのだそうです。現地に入り込み、現地のネットワークを使って、地道にリユース先を探しています。

リリーフの挑戦と生前整理のススメ

「我々はもともとはゴミ屋です。社長は、廃棄物処理問題を社会的課題と捉え、社会が抱える課題を解決することを目指しています。ゴミ屋は、ゴミがあればあるほど儲かりますが、行政とともにゴミの減量化に取り組み、目標を達成させてきました。社長にとっては、遺品整理も社会的に解決すべき課題の一つでした。ゴミ屋は最終的な処分の仕事。遺品整理はその前の、整理の部分がメインの仕事です。不要品も出てきますが、必要品も出てきます。重要なのは分けることなんです。思い出深いものや大切なものを整理することで、心の整理もできます」

同社では基本的に、遺族の立会いのもとに遺品整理を行ないます。

処分すべきか迷うものは分けておき、まとめて確認してもらう手順を踏んでいます。自分でやるといちいち手が止まってしまいますが、業者にまかせると、分けておいてもらった分だけ確認すれば良いので、効率良く作業が進みます。

「高齢になってくると、整理するのが億劫になってきますが、自分が使ってきたものなので、本来は元気なうちに、自分で整理しておくのが一番です。終活系イベントなどの講演の中でも伝えていることですが、これまでの人生を振り返り、心の整理ができるというメリットもあるので、生前整理がオススメです」

「立つ鳥後を濁さず」とも言いますが、高齢になるとなかなか合理的にはいかないようです。

貴重品を捨ててしまわないよう確認する
後で確認が必要なものを丁寧に箱詰めしていく

遺品整理という仕事が誕生してから十数年が経ちました。おかたづけサービス事業スタートから5年。分社して9カ月。同社は今後、どのような展開をしていくのでしょうか。

「現在当社は、広がってきた波にに上手く乗れたこともあり、業界大手の位置にいます。仕事も業界も若いので、基準がありませんし、先に誰もいないので、前例者がいません。自分たちでマーケットを作りながら、突き抜けていく仕事をしていかないといけません」

掃除などの家事代行サービスの会社や、ゴミ処分の会社はありますが、遺品整理専門の会社はすぐには思い浮かびません。

「我々は『遺品整理専門の会社です』というところから始めて、『遺品整理専門の会社がある』ということを認知してもらって、その中で『信頼できるのはリリーフだ』というところまで持って行きたいんです。認知活動とブランディングを同時に行なうことは難しい反面、やりがいもあります。ゼロからのスタートなので、このままリードし続けたいと思っています。圧倒的な差がつくまで何年かかるのか、今は全く見えませんが、ゴミ屋から出発した我々にとっては、リリーフ自体が挑戦です。当社は業界ナンバーワンを目指します」

確実に多死社会は進行していて、遺品整理に対する需要は高まっています。遺品整理のリーディングカンパニーとして、遺品整理業者を安心して利用できるよう、誠実で信頼出来る業界作りを進めていただけることを期待しています。

関連サイト


旦木瑞穂(たんぎ みずほ)
1975年愛知県出身。
産経デジタル「New Roses Web」にてグルメ・イベントレポートや、鎌倉新書「月刊 仏事」で葬儀や介護に関する記事などを連載。
各種パンフレット、ガイドブックなどの企画編集のほか、グラフィックデザイン、イラスト制作も行なう。

Twitter:@mimizupon

[旦木瑞穂]